血圧記録のコツ

■適切な治療につながる血圧測定
毎日同じ時間に測定する。できれば朝夕2回、少なくとも朝1回
血圧手帳を作成して記録する。
・高血圧症の管理目標を把握しておく。
※ページ下部に管理目標のを添付しています。

■ 根拠となる公的情報・エビデンス📚
・日本循環器学会, 日本栄養・食糧学会, 日本小児循環器学会, 他. 冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドライン(2023年改訂版). 2023.
・日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会, 編. 高血圧治療ガイドライン2019. ライフサイエンス出版; 2019.
・日本高血圧学会高血圧管理・治療ガイドライン委員会, 編. 高血圧管理・治療ガイドライン2025. ライフサイエンス出版; 2025.

目次

解説

白衣高血圧(はくいこうけつあつ)」や「仮面高血圧(かめんこうけつあつ)」という言葉を知っていますか?
日本循環器学会のガイドラインではそれぞれ下記のように説明されます。

白衣高血圧:「診察室血圧は140/90mmHg以上であるが、いかなる時間帯の家庭血圧でも135/85 mmHg未満あるいは24時間自由行動下血圧測定 (ABPM)が130/85 mmHg未満」
仮面高血圧:「診察室血圧が140/90mmHg未満であっても、家庭血圧が135/85 mmHg以上あるいは24時間 ABPMが130/80 mmHg以上」

要するに、診察室で測定すると緊張して血圧が高く出やすかったり、反対に日中のストレスや身体活動によって診察室外での測定で高く出やすい場合があるのです。
たとえば、お医者さんや看護師さんの白い服(白衣)を見るだけで、無意識のうちに体が緊張モード(交感神経が優位な状態)になり、血圧が上がってしまうことがあります。
逆に、病院にいるときはリラックスしていても、職場や家庭でのストレスにさらされている時間帯だけ血圧が高くなり、まるで仮面をかぶったように本当の高血圧が隠れてしまうこともあるのです。

白衣高血圧や仮面高血圧が何たるか(詳しい定義など)を完璧に知っておく必要はありません。
知っておくべきは、「血圧はそれだけ些細なことで変動してしまう」という事実です。

■ 毎日同じ時間に測定!家庭血圧測定のポイントとタイミング
では、自宅で血圧を測る際にはどのような点に気をつければよいのでしょうか。
最も大切なポイントは、「毎日同じ時間に測定する」ということです。

血圧は、朝起きてから夜眠るまで、1日の中でも常に波のように上下しています。
そのため、ある日は昼に測り、次の日は夜遅くに測るというようにバラバラな時間で測定してしまうと、数値の変化が「時間のせい」なのか「体調のせい」なのかが判断しづらくなってしまいます。

💡測定のタイミング
できれば朝と夕(就寝前)の2回、忙しい場合でも少なくとも朝1回行うことが良いでしょう。

☀️朝の測定タイミング
起きてから1時間以内、トイレを済ませた後、朝ご飯や治療薬を飲む前に、1〜2分ほど座って椅子で落ち着いてから測りましょう。
朝の血圧は、心筋梗塞や脳卒中などのリスクを予測する上で特に重要と言われています。

🌙夜(就寝前)の測定タイミング
夜は、お布団に入る前のリラックスした状態で測ります。入浴や飲酒の直後は血圧が一時的に下がることがあるため、お風呂上がりやアルコールを飲んだ直後は避け、少し時間を置いてから測定するのがポイントです。

毎日同じタイミング、同じ条件で測定することで、あなたの体の「いつもの基準(ベースライン)」が見えてくるようになります。

■ 血圧手帳の重要性!数値の「点」ではなく「線」で見る健康管理
家庭で測った血圧の数値は、ぜひ「血圧手帳」を作成して記録しておきましょう。
最近ではスマートフォンのアプリで記録できるものもありますが、紙の手帳でもどちらでも構いません。
大切なのは、数値をその場限りのものにせず、残しておくことです。

血圧手帳をつける最大のメリットは、血圧の動きを「点」ではなく「線(トレンド)」として捉えられるようになる点にあります。

人間の体は季節や気温の変化にも影響を受けます。一般的に、寒くなると血管が縮むため血圧は上がりやすく、暖かくなると下がりやすい傾向があります。
血圧手帳に数週間、数ヶ月と記録が溜まっていくと、「最近、寒くなってから少し高めの数値が続いているな」「今週は寝不足気味だから高めかもしれない」といった、ご自身の体の傾向や生活リズムとの関係性に気づくことができるようになります。

そしてこの記録は、医療機関を受診した際、医師にとって何よりの貴重な診断材料になります。
例えば、診察室での血圧が少し高くても、血圧手帳に「家では落ち着いています」という記録があれば、医師はより正確にあなたの状態を把握することができます。
お薬の量を調整したり、生活習慣のアドバイスを行ったりする際にも、この手帳があることで、よりあなたに合った適切な治療へとつながりやすくなるのです。

■ まとめ
血圧測定は、決して「高い数値を見つけて一喜一憂するため」のものではありません。毎日同じようなタイミングで測定し、血圧手帳に記録していくことは、ご自身の体調の変化にいち早く気づき、未来の健康を守るための優しい習慣です。
もし、ご自宅での測定でいつもより高い数値が続いていたり、「自分の測り方はこれで合っているのかな?」と不安に思ったりしたときは、自己判断で放置せず、まずはかかりつけの医療機関や専門医に相談してみてください。
血圧手帳を持参して相談することで、きっとあなたに寄り添った最適なアドバイスを受けられるはずです。小さな変化を見逃さず、適切な受療行動につなげていきましょう。

注意点・免責事項
本記事は情報提供を目的としており、医師の診断や治療に代わるものではありません。個別具体的な症状や血圧の管理目標値等については、必ず医療機関にご相談ください。

高血圧の管理目標(高血圧管理・治療ガイドライン2025より)

対象患者の背景診察室血圧目標 (mmHg)家庭血圧目標 (mmHg)臨床上の留意点・エビデンス
75歳未満の成人(特記すべき合併症なし)<130/80<125/75脳心血管病予防のため、基本となる目標値です。
高齢者(75歳以上)<140/90(容認:<130/80)<135/85(容認:<125/75)JSH2025の肝: 併存疾患や忍容性を評価しつつ、最終的に 130/80 mmHg 未満への到達を目指します。
糖尿病合併<130/80<125/75脳卒中や心血管イベントだけでなく、微小血管症(糖尿病腎症・網膜症)の進展抑制に必須です。
慢性腎臓病(CKD)※蛋白尿陽性<130/80<125/75腎保護および心血管病抑制のため、ACE阻害薬またはARBを第一選択として厳格に管理します。
慢性腎臓病(CKD)※蛋白尿陰性<140/90(容認:<130/80)<135/85(容認:<125/75)高齢者と同様、忍容性があれば 130/80 mmHg 未満を視野に入れます。
冠動脈疾患(CAD)合併<130/80<125/75冠血流維持のため、過降圧(特に拡張期血圧 <60 mmHg)によるJ-curve現象(過降圧で逆にリスクが上がること)に留意します。
脳血管障害既往(慢性期)<130/80<125/75脳卒中再発予防効果が極めて高いです。ただし、両側内頸動脈高度狭窄や主幹脳動脈閉塞がある場合は個別判断となります。
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