要介護認定はどう決まるのか — 要支援・要介護の分かれ目と見直し方

「思ったより軽い認定が出てしまった」「本人は元気そうに見えるのに、要介護3になった」——要介護認定の結果を受け取って、そんな戸惑いを感じたことはないでしょうか。

要介護度は、病気の重さをそのまま表しているわけではありません。

この記事では、認定がどんな仕組みで決まり、区分によって何が変わり、結果に納得がいかないときにどうすればよいかを、順を追って説明します。

この記事の要点

  • 要介護認定は病気の重さではなく、介護サービスの必要度を判断するもの。
  • 判定は主治医意見書、認定調査をもとに一次判定(コンピュータ)→二次判定(介護認定審査会)の二段階で行われる。
  • 要支援は状態の維持・改善を目指す「予防給付」、要介護はすでに一定の介護が必要な状態への対応を主眼とする「介護給付」であり、分かれ目は「状態が安定しているか」「本人が予防的なサービスを理解して使えるか」という質的な軸である。
  • 要介護2と3では、使えるサービスの量(区分支給限度基準額)特別養護老人ホームに新規入所できるかどうかが変わる。
  • サービスの上限そのものが足りていないと感じるなら区分変更を、サービスの組み合わせ方が合っていないと感じるならケアプランの変更を検討する。

それぞれ、順を追って説明します。

目次

判定の仕組み

要介護認定の判定の流れ:申請から認定調査・主治医意見書、一次判定、二次判定(介護認定審査会)を経て、非該当・要支援1〜2・要介護1〜5のいずれかに認定結果が通知されるまでのフロー図

要介護認定は、病気そのものの重さではなく、「介護サービスがどれだけ必要か」を判断するものです。認知症で身体は元気でも見守りの手間が大きいケースと、身体機能が低くても手のかからないケースとでは、必要な介護の手間が異なります。そのため、要介護度が病状の重さの印象と一致しないことがあります。

判定は二段階で進みます。まず一次判定で、認定調査の結果をもとにコンピュータが「介護の必要度」を数値として推計します。次に、この一次判定の結果と主治医意見書などをもとに、保健・医療・福祉の学識経験者からなる介護認定審査会が審査し、最終的な区分を決めます(二次判定)。この二段階のプロセスを知っておくと、「思ったより軽い/重い認定が出た」ときに、何を根拠に決まった数字なのかを理解しやすくなります。

たとえば、認知症のある方は、身体的な自立度だけを見ると軽く見えても、目を離せない時間の長さや、行動・心理症状への対応に多くの手間がかかることがあります。逆に、身体的な障害があっても、本人が工夫して日常生活を送れている場合や、周囲の生活環境が整っている場合には、必要な介護の手間が小さく算出されることもあります。「病状」ではなく「介護の手間」を見ている、という視点を持っておくと、認定結果への受け止め方が変わってきます。

判定のものさし「要介護認定等基準時間」

一次判定のもとになっているのは、「要介護認定等基準時間」という指標です。これは、介護老人福祉施設等に入所している高齢者約3,500人を対象に、48時間にわたってどんな介護がどれくらいの時間行われたかを調べた「1分間タイムスタディ・データ」から推計されています。具体的には、食事や排せつの介助といった直接生活介助、洗濯や掃除といった間接生活介助、認知症の行動・心理症状への対応(BPSD関連行為)、機能訓練関連行為、医療関連行為という5分野の時間に、認知症加算を加えて算出されます。

ここで、必ず知っておきたい注記があります。この基準時間は、実際に家庭で行われている介護の時間や、訪問介護・訪問看護といった在宅サービスの合計時間と、そのまま一致するものではありません。あくまで「介護の必要性を測るものさし」であって、「1日に何時間介護しているか」を表す数字ではないのです。たとえば、家族が交代で様子を見に来ている時間や、声かけだけで済んでいる時間は、この基準時間の算出には直接反映されません。「基準時間=実際にかかる介護時間」と誤解されやすい部分なので、区分の重さを見るときはこの点を念頭に置いておくとよいでしょう。

要支援と要介護の分かれ目

区分ごとの要介護認定等基準時間は、次のとおりです。

区分基準時間
要支援125分以上32分未満
要支援2・要介護132分以上50分未満
要介護250分以上70分未満
要介護370分以上90分未満
要介護490分以上110分未満
要介護5110分以上

出典: 厚生労働省.要介護認定はどのように行われるか.をもとに作成

この表で目を引くのは、要支援2と要介護1が、同じ「32分以上50分未満」という帯域に入っている点です。両者を分けているのは時間の長さではなく、「心身の状態が比較的安定しているか」「本人が予防給付(要支援向けサービス)の内容を適切に理解して使えるか」という、質的な軸です。

項目要支援2要介護1
基準時間32分以上50分未満32分以上50分未満
心身の状態比較的安定不安定(例: 脳卒中・心疾患の急性期)
予防的サービスの理解理解して使える理解が難しい(例: 認知症など)
給付の枠組み予防給付介護給付

出典: 厚生労働省.要介護認定はどのように行われるか.をもとに作成

つまり、家族から見て同じような困りごとに見えても、状態の安定性や本人の理解度によって、要支援2と要介護1に分かれることがある、ということです。「なぜうちは要介護1になったのに、似た状態の知人は要支援2だったのか」という疑問の背景には、こうした基準があります。

要支援は状態の維持・改善を目指す「予防給付」、要介護1以上はすでに一定の介護が必要な状態への対応を主眼とする「介護給付」という枠組みで提供され、区分によって利用できるサービスの組み立て方も変わります。

要介護2と要介護3で変わること

数ある区分の中でも、要介護2と要介護3の境目は、実際の生活やサービスの選択肢に影響する変化が大きい分かれ目です。

項目要介護2要介護3
基準時間50分以上70分未満70分以上90分未満
区分支給限度基準額(1か月あたり)19,705単位27,048単位
特別養護老人ホームへの新規入所原則不可(特例入所のみ)原則可能

出典: 厚生労働省.要介護認定はどのように行われるか.厚生労働省.介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)参考資料.社会保障審議会介護給付費分科会第143回.厚生労働省.居宅介護サービス費等区分支給限度基準額及び介護予防サービス費等区分支給限度基準額(平成12年厚生省告示第33号).をもとに作成

まず、1か月に使えるサービスの上限(区分支給限度基準額)が、要介護2の19,705単位から要介護3の27,048単位へと、7,343単位分増えます。単位数が増えると、通所介護や訪問介護の利用回数を増やしたり、複数のサービスを組み合わせたりする余地が広がります。

もう一つの大きな分かれ目が、特別養護老人ホーム(特養)への新規入所です。2015年4月以降、特養への新規入所は原則として要介護3以上に限定されています。要介護1・2の方でも、やむを得ない事情がある場合には、市町村の関与のもとで特例的に入所できる仕組みはありますが、あくまで例外的な扱いです。「施設入所を考え始めたときに、要介護3という数字が一つの節目になる」ということは、知っておいて損はありません。使えるサービスの量、施設入所の可否——区分が一段上がるごとに、選べる選択肢の幅が広がっていく、その一例がこの要介護2と3の境目にあらわれています。

区分変更の申請

要介護認定には有効期間がありますが、その期間の途中でも、心身の状態が変わったときは、更新を待たずに区分を見直してもらう申請ができます。これを「区分変更申請」といいます。

骨折や脳卒中、認知症の進行などで介護の必要度が上がった場合はもちろん、リハビリなどによって状態が改善した場合にも申請できます。手続きの流れや申請できる人は、新規申請のときと同じなので、市区町村の介護保険担当または地域包括支援センターが窓口となります。本人・家族のほか、地域包括支援センターや居宅介護支援事業者、介護保険施設などが代行することもできます。認定調査・主治医意見書の提出・審査判定という一連のプロセスを経て、新しい区分が決まります。変更後の認定の有効期間も、新規申請と同じく原則6か月(3〜12か月の範囲で個別に設定)です。

ただし、区分変更を申請したからといって、必ず区分が変わるとは限りません。新規申請のときと同じように、あらためて認定調査・主治医意見書・二段階の判定というプロセスを経るため、申請した側が見込んでいた区分と、実際の結果が異なることもあります。また、申請から結果が出るまでの期間の目安についても、新規申請のときとほぼ同じと考えてよいでしょう。

「前回の認定から状態がはっきり変わった」と感じるときは、次の更新のタイミングまで待つ必要はない、ということを覚えておくとよいでしょう。

サービスが合わないと感じたときの相談先

ここまで見てきた「区分変更申請」は、要介護度そのものを変える手続きです。一方で、要介護度は変わらなくても、サービスの組み合わせ(ケアプラン)を見直したいという場面もあります。この二つは別の手続きであり、窓口も異なります。

同じ要介護度のままサービスの内容を調整したいときは、担当のケアマネジャーに相談します。ケアマネジャーは、特段の事情がない限り月1回、利用者の自宅を訪問してモニタリングを行います(要支援の方向けの介護予防支援は3か月に1回)。この訪問の場で困りごとや状態の変化を伝えれば、ケアプランの見直しにつながります。ケアプランを変更する際は、原則として本人・家族、ケアマネジャー、サービス事業者が集まるサービス担当者会議を開いて検討しますが、利用回数を週1回程度増減させる程度の「軽微な変更」であれば、この会議を開かずに調整できる場合もあります。なお、要介護認定の更新や区分変更認定を受けたときは、原則としてこのサービス担当者会議を開いてケアプランを見直すことになっています。

「区分変更」と「ケアプランの見直し」を混同しやすいのは、どちらも「今のサービスが合わなくなってきた」という同じきっかけから始まるためです。しかし、区分変更は要介護度そのもの(=使えるサービスの上限)を動かす手続きであるのに対し、ケアプランの見直しは、今の上限の範囲内でサービスの組み合わせ方を変える作業です。上限そのものが足りていないと感じるのか、組み合わせ方が合っていないと感じるのか——この違いを意識しておくと、ケアマネジャーに相談したときの話もかみ合いやすくなります。

つまり、「今のサービスが合わなくなってきた」と感じたときの選択肢は、大きく分けて二つです。要介護度自体が変わったと感じるなら区分変更申請、サービスの組み合わせだけを調整したいならケアマネジャーへの相談、という整理をしておくと、次にどこへ動けばよいかが見えやすくなります。

項目区分変更申請ケアマネジャーへの相談(ケアプランの見直し)
変えるもの要介護度そのもの(使えるサービスの上限)今の要介護度の範囲内でのサービスの組み合わせ
窓口市区町村(本人・家族のほか、地域包括支援センター・居宅介護支援事業者・介護保険施設が代行可)担当のケアマネジャー
手続きの流れ新規申請と同じ(認定調査・主治医意見書の提出・一次判定・二次判定)サービス担当者会議で検討(軽微な変更は会議を省略できる場合あり)
結果必ず区分が変わるとは限らない会議での合意にもとづきケアプランを変更
相談・申請のタイミング心身の状態が変わったとき(更新を待たず随時)月1回のモニタリング訪問時、またはいつでも連絡可(要支援は3か月に1回)
変更後の有効期間原則6か月(3〜12か月の範囲で個別に設定)特に定めなし(必要に応じて随時見直し)

出典: 厚生労働省.要介護認定はどのように行われるか.厚生労働省.介護保険法(平成9年法律第123号)第29条.厚生労働省老健局.(別添)居宅介護支援・介護予防支援・サービス担当者会議・介護支援専門員に係る項目及び項目に対する取扱い.をもとに作成

相談するときに伝えるとよいこと

  • 困りごとが具体的に何で、いつごろから、どんなときに強くなったか
  • 今使っているサービスのうち、足りていない点・使えていない点
  • 心身の状態の変化が分かる情報(通院・入院の有無、診断の変化など)があれば、その内容

この記事だけで、区分変更を申請すべきかどうかや、ケアプランをどう変えるべきかを自己判断しないでください。実際にどう進めるとよいかは、本人の状態や生活の状況によって変わります。

要介護度は、一度決まったら固定されるものではなく、心身の状態や生活の変化に応じて見直していくものです。認定結果を受け取った時点をゴールにせず、「今の区分やケアプランが、今の状態に合っているか」を折にふれて確認していく——そうした視点を持っておくと、制度をより実情に近い形で使いこなせるようになります。

なお、相談窓口の探し方、申請から認定が出るまでの具体的な流れや期間については、姉妹記事「介護保険の申請 — 何から始めればいいのか」で扱っています。あわせてご覧ください。

出典

出典の選び方については編集方針をご覧ください。

  • 厚生労働省.要介護認定はどのように行われるか.
  • 厚生労働省.介護保険法(平成9年法律第123号)第27条・第29条.
  • 厚生労働省.介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)参考資料.社会保障審議会介護給付費分科会第143回(平成29年7月19日).
  • 厚生労働省.居宅介護サービス費等区分支給限度基準額及び介護予防サービス費等区分支給限度基準額(平成12年厚生省告示第33号).
  • 目黒区.区分支給限度額(介護保険から給付される一か月あたりの上限額).
  • 船橋市.要介護認定の有効期間.
  • 厚生労働省老健局.(別添)居宅介護支援・介護予防支援・サービス担当者会議・介護支援専門員に係る項目及び項目に対する取扱い.

本記事の内容は一般的な医学・制度情報であり、個別の診断や手続きの助言ではありません。免責事項もあわせてご確認ください。

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