頭痛が起きたとき — 多くは心配ないが、見逃したくない頭痛もある

「頭が痛い」——ほとんどの人が、人生で一度は経験する症状です。市販の鎮痛薬で治まり、そのまま気にせず過ごすことがほとんどでしょう。

しかしごくまれに、このありふれた頭痛に見えるものの中に、くも膜下出血や髄膜炎といった、見逃すと命に関わる病気が隠れていることがあります。

この記事では、救急外来を受診した頭痛患者のうちどれくらいが重い病気だったのか、頭痛はどのように分類されるのか、そして危険なサインをどう受け止めればよいのかを、文献をもとに整理します。

この記事の要点

  • 救急外来を受診する頭痛のうち、二次性頭痛(何らかの病気が原因の頭痛)は4割前後という報告がある(施設や対象によって数字には幅がある)。
  • 頭痛はICHD-3という国際分類で、原因となる病気がない「一次性頭痛」と、病気が原因の「二次性頭痛」に大別される。
  • 危険なサインを知っておくことは大切だが、これだけで危険かどうかを判断できるわけではない。
  • 神経症状の有無、痛みの現れ方、随伴症状の有無を整理する。
  • 【受診の目安】これまでにない激しい頭痛が数分以内に最も強くなり、かつ手足の動かしにくさ・ろれつが回らないなどの症状を伴う場合は、救急要請が推奨される。

それぞれ、順を追って説明します。

目次

救急外来を受診した頭痛の内訳

「頭痛」を主訴に救急外来を受診する患者は、実は全体から見るとごくわずかです。イタリアの救急外来を6か月間受診した38,238人のうち、外傷によらない頭痛を主訴としたのは300人、割合にして0.8%にとどまったという報告があります。

この300人の内訳を見ると、二次性頭痛(何らかの病気が原因の頭痛)と診断されたのは41.3%、一次性頭痛(原因となる病気が見つからない頭痛)は24.3%、原因を特定できなかった頭痛が34.4%でした。

救急外来を受診した非外傷性頭痛患者300人の内訳を示す横棒グラフ。二次性頭痛41.3%、一次性頭痛24.3%、原因不明34.4%。
出典: Relja G, et al. J Headache Pain. 2005 Sep;6(4):298-300. PMID: 16362692. のデータをもとに作成

ただしこの数字は、イタリアの一地域・単一施設・2000年代のデータであり、そのまま日本の実情に当てはめられるものではありません。実際、画像検査(CTやMRI)を受けた頭痛患者に絞って調べたサウジアラビアの報告では、二次性頭痛の割合は48.9%とさらに高くなっています。ただしこの研究は、そもそも画像検査が必要と判断された患者だけを対象にしているため、軽症で画像検査をしなかった患者は含まれていません。実際の受診者全体における二次性頭痛の割合は、これより低い可能性があります。

こうした数字の幅からわかるのは、「救急外来を受診する頭痛の多くは一次性頭痛で心配のいらないものだが、二次性頭痛が一定数混ざっている」という大枠自体は、複数の報告で共通している、という点です。正確な割合を一つの数字で言い切ることはできません。

一次性頭痛と二次性頭痛の分類

頭痛の分類を示す図。頭痛は、検査をしても原因となる病気が見つからない一次性頭痛(片頭痛・緊張型頭痛・群発頭痛など)と、何らかの病気が原因で起こる二次性頭痛(くも膜下出血・髄膜炎・脳腫瘍・巨細胞動脈炎など)に分類される。
出典: 日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会(編). 頭痛の診療ガイドライン2021. 医学書院; 2021. および Headache Classification Committee of the International Headache Society (IHS). Cephalalgia. 2013 Jul;33(9):629-808. PMID: 23771276. をもとに作成

頭痛は、国際頭痛分類第3版(ICHD-3)という国際的な基準によって、大きく「一次性頭痛」と「二次性頭痛」に分類されています。

一次性頭痛は、片頭痛・緊張型頭痛・群発頭痛など、頭痛そのものが病気であり、検査をしても原因となる別の病気が見つからないタイプです。多くの人が経験する頭痛の大半は、こちらに含まれます。

これに対して二次性頭痛は、くも膜下出血・髄膜炎・脳腫瘍・巨細胞動脈炎といった、何らかの病気が原因になって起こる頭痛です。頭痛そのものは「症状」であり、原因になっている病気を見つけて治療する必要があります。

この分類は、あくまで「原因の有無」による大枠の整理です。実際にどちらに当てはまるかは、次の章で説明するような症状の現れ方をふまえて医師が判断します。

危険な頭痛のサイン

二次性頭痛を見逃さないために、医療の現場では「危険なサイン」を示すいくつかの指標が使われています。代表的なものが、2019年に提唱された「SNNOOP10」と呼ばれる15項目のリストです。

このリストのうち、とくに知っておきたい項目を抜粋すると、次のようになります。

こんな頭痛があるときは、救急要請が推奨されています

  • これまでに経験したことがない、人生で一番強い頭痛
  • 数秒から数分で痛みが最大になった頭痛
  • 発熱を伴う頭痛
  • 手足の動かしにくさ・しびれ・ろれつが回らないなど、神経の症状を伴う頭痛
  • 意識がもうろうとする、呼びかけへの反応が鈍い。
  • 視力の変化、物が二重に見える。
  • 高齢になってから初めて経験する頭痛
  • 妊娠中・産後に起きた頭痛

とくに、痛みが数分以内に最も強くなる頭痛(いわゆる「雷鳴頭痛」)に、手足の動かしにくさやろれつが回らないといった神経の症状が重なる場合は、すぐに救急車を呼んでください

ここで大切なのは、このリストが「当てはまれば即・危険な病気」という意味ではない、ということです。

実際、危険なサインに当てはまっても、実際にくも膜下出血だった人は少数派だったという報告があります(神経の症状がなく意識もはっきりしている頭痛を対象にした研究で13.6%)。逆に、危険なサインがそろっていないからといって安心とも言い切れません。細菌性髄膜炎の患者でも、代表的な3つの症状がすべてそろっていたのは44%にとどまったという報告があります。

「危険なサインの一覧」は、あくまで見るべき視点であり、当てはまるかどうかだけで白黒つけられる診断ツールではありません。

一方で、一次性頭痛らしさを示す所見も知られています。専門家の合意(デルファイ法によるコンセンサス)では、「子どもの頃から続いている頭痛」「月経周期に関連して起こる頭痛」「まったく痛みのない日がある」といった特徴が、二次性頭痛の可能性を下げる手がかりとして挙げられています。ただしこれも専門家の合意に基づくものであり、感度・特異度などの診断精度が検証されているわけではありません。

痛みの現れ方が伝える情報

危険なサインの一つに挙げた「痛みが数分以内に最大になる頭痛」、いわゆる雷鳴頭痛は、くも膜下出血を疑う代表的な特徴として知られています。しかし「瞬時に痛みが最大になった=くも膜下出血」と単純に言い切ることはできません。

動脈瘤の破裂によるくも膜下出血の患者と、検査をしても原因が見つからない良性の雷鳴頭痛の患者を比較した研究では、痛みが文字通り一瞬で最大になった割合は、くも膜下出血群で50%だったのに対し、良性の雷鳴頭痛群ではむしろ高い68%でした。痛みの立ち上がりが速いという特徴だけでは、くも膜下出血と良性の頭痛を区別できないということです。

この研究の著者らは、「神経症状がないからといって、動脈瘤の破裂を除外してはいけない」とも述べています。発症の速さは、受診を考える材料の一つにはなりますが、それだけで安全か危険かを判定する材料にはなりません。

随伴する症状が伝える情報

痛みの現れ方に加えて、頭痛以外にどんな症状を伴っているかも、重要な手がかりになります。

発熱や首の後ろのこわばりを伴う頭痛は、髄膜炎を疑う代表的な組み合わせです。ただし前の章で触れたとおり、この組み合わせがそろわないからといって、髄膜炎を否定できるわけではありません。

視力の変化や、頭皮・こめかみのあたりの痛みを伴う頭痛は、巨細胞動脈炎(側頭動脈炎とも呼ばれます)を疑う手がかりになります。巨細胞動脈炎は、血管の炎症によって視力を失うおそれのある病気で、欧州頭痛連盟(European Headache Federation)は医学的な緊急事態として速やかな対応が必要だとしています。「側頭動脈炎」という呼び方は、巨細胞動脈炎というより大きな病気のうち、頭部の血管(側頭動脈)に炎症が起きたタイプを指す通称です。

数週間から数か月かけてじわじわと強くなっていく頭痛や、これまでと明らかにパターンが変わった頭痛は、脳腫瘍を疑うサインの一つとされています。ただし脳腫瘍そのものは、頭痛を訴える患者全体から見るとまれです。18万人超の頭痛患者を対象にした米国の研究では、早期に画像検査を受けた患者群のうち、実際に悪性脳腫瘍が見つかったのはわずか0.28%でした。「頭痛イコール脳腫瘍かもしれない」と過度に心配する必要はありませんが、痛みのパターンの変化には注意を向ける価値があります。

受診前の状況整理

医療機関を受診する際、次の3つを整理しておくと、医師とのやり取りがスムーズになります。

医師に伝えること

  1. 神経の症状の有無(手足の動かしにくさ、しびれ、ろれつが回らない、意識の変化など)
  2. 痛みが最も強くなるまでの時間(数秒〜数分で最大になったか、徐々に強くなったか)
  3. 一緒に出ている症状とその始まった時期(発熱、視力の変化、首のこわばり、吐き気・嘔吐など)

この記事だけで自己判断をしないでください。数分以内に痛みが最大になった、これまでにない激しい頭痛に、手足の動かしにくさやろれつが回らないといった神経の症状が重なる場合は、救急要請が推奨されます。

出典

出典の選び方については編集方針をご覧ください。

  • Relja G, et al. J Headache Pain. 2005 Sep;6(4):298-300. PMID: 16362692.
  • Alanazy MH, et al. Neurosciences (Riyadh). 2023 Jan;28(1):36-41. PMID: 36617453.
  • 日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会(編). 頭痛の診療ガイドライン2021. 医学書院; 2021.
  • Headache Classification Committee of the International Headache Society (IHS). Cephalalgia. 2013 Jul;33(9):629-808. PMID: 23771276.
  • Do TP, et al. Neurology. 2019 Jan;92(3):134-144. PMID: 30587518.
  • Perry JJ, et al. CMAJ. 2017 Nov;189(45):E1379-E1385. PMID: 29133539.
  • Pohl H, et al. Headache. 2021 Feb;61(2):300-309. PMID: 33405273.
  • van de Beek D, et al. N Engl J Med. 2004 Oct 28;351(18):1849-59. PMID: 15509818.
  • Linn FH, et al. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 1998 Nov;65(5):791-3. PMID: 9810961.
  • Mollan SP, et al. J Headache Pain. 2020 Mar 17;21(1):28. PMID: 32183689.
  • Carey MR, et al. PLoS One. 2019 Feb 1;14(2):e0211599. PMID: 30707721.
  • Cuneo A, et al. Semin Neurol. 2024 Feb;44(1):74-89. PMID: 38183973.

本記事の内容は一般的な医学情報であり、個別の診断や治療の助言ではありません。免責事項もあわせてご確認ください。

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