めまいがするとき — “グルグル”か”フワフワ”かより、大事なこと

「めまいがした」と言おうとして、「グルグル回る感じ」と「フワフワ浮くような感じ」、どちらの言葉が近いか迷ったことはないでしょうか。周りの景色が回って見えたのか、それとも地面が揺れているような、雲の上を歩くような感覚だったのか——診察室でこの違いをうまく説明できず、もどかしい思いをした経験がある人もいるかもしれません。

実はこの”感じ方”の違いだけでは、原因を見分ける手がかりとしてはあまり役に立たないことが分かってきています。医師が実際に重視しているのは、別の情報です。

この記事では、めまいとはそもそも何なのか、多くの場合は何が原因なのか、そして見逃してはいけないのはどんな場合かを、文献をもとに整理します。

この記事の要点

  • めまいは意識を保ったまま感じる症状で、失神や意識障害とは区別される。
  • めまいで救急外来を受診した人のうち、15%超は脳卒中を含む危険な原因とされるが、多くは耳が原因の命に関わらないめまいである。
  • 「グルグル回る」か「フワフワ浮く」かという感じ方の違いだけでは、原因を見分ける手がかりとして不十分とされている。
  • 医師が実際に重視するのは、いつから・どれくらい続くかと、何がきっかけで起きるかの2つ。
  • 心因性の要素を含むめまい(持続性姿勢知覚めまい症)という診断名も国際的に定義されている。これも「気のせい」ではない。
  • 【受診の目安】突然の激しいめまいに、ろれつが回らない・物が二重に見える・激しい頭痛を伴う場合は、救急車の要請が推奨されています。

それぞれ、順を追って説明します。

目次

めまいとは何か — 失神・意識障害との違い

意識の状態によってめまい・失神/前失神・意識障害を分類する図解。めまいは意識を保ったまま自覚する回転性あるいは浮動性の症状、失神・前失神は意識の完全喪失と自然回復、あるいは意識を失いそうな予感、意識障害は意識レベルそのものが保たれていない状態で自然回復しないことを示す。
出典: Newman-Toker DE, et al. Neurol Clin. 2015 Aug;33(3):577-99. PMID: 26231273. をもとに作成

まず、「めまい」という言葉が指しているものを整理します。

めまいは、意識が保たれたまま、自分や周囲が動いているように感じる回転性の症状や、ふらつき・不安定感のような浮動性の症状を自覚するものです。

これに対して、失神は、脳への血流が一時的に不足することで、急に意識を完全に失い、そのあと自然に、完全に意識が戻る状態を指します。前失神は「意識を失いそうな予感」を指します。両者はめまいとは区別される症状ですが、実際には患者本人の言葉が「頭がふらっとする」「遠のく感じ」のように表現され、めまいとも前失神とも取れることが少なくありません。この境界は、医師にとっても言葉だけで判別しにくいことが指摘されています。

意識障害はさらに別のカテゴリーです。呼びかけへの反応が鈍い、あるいはもうろうとした状態が続くなど、意識レベルそのものが保たれていない状態を指し、めまいや失神のように短時間で自然に回復するとは限りません。原因となる病気の種類も異なり、脳卒中、脳炎、けいれん、栄養不足(ビタミンB1欠乏など)、中毒などが関わるとされています。

こうして整理すると、めまい・失神・意識障害は別のものだと分かりますが、実際に症状が起きている本人にとっては、この3つを言葉で正確に区別するのは簡単ではありません。だからこそ、次の章で説明する「いつから、どんなときに起きたか」という情報が、診察の助けになります。

めまいの原因の多くは”耳”にある

実際のところ、めまいの原因としていちばん多いのはどんなものでしょうか。

めまいの原因は非常に幅広く、救急外来を受診する人に限っても、単独で全体の5〜10%を超える原因はないとされています。そのなかで、良性発作性頭位めまい症は約10%を占め、原因としておそらく2番目に多いとされています。良性発作性頭位めまい症は、耳の奥でバランスを感知している器官(耳石器)から剥がれた小さな結晶(耳石)が、別の場所(半規管)に迷い込むことで起きるとされ、寝返りを打つ・見上げるなど、特定の頭の動きで誘発されるのが特徴です。

ドイツの一般人口を対象にした調査では、良性発作性頭位めまい症の生涯有病率は2.4%、1年有病率は1.6%でした。症状を経験した人の86%が医療機関を受診した一方、耳石を元の位置に戻す処置(耳石置換法)という有効な治療を受けたのはわずか8%にとどまったと報告されています。日本めまい平衡医学会の治療方針でも、この耳石置換法が強く推奨されています。

ほかにも、耳から脳への信号を伝える神経が炎症を起こし、数日にわたって持続する激しいめまいを起こす前庭神経炎があります。文献では、突然発症して長く持続するタイプのめまいの中で最も典型的な原因として前庭神経炎が挙げられています。

数分から数時間にわたる発作を繰り返すタイプのめまいでは、内耳の水ぶくれ(内リンパ水腫)が原因とされ、一側性で変動する難聴や耳鳴りを伴うことが特徴のメニエール病や、片頭痛の既往や視覚の異常(閃輝暗点など)を伴うことが手がかりになる前庭性片頭痛が代表的とされています。なお、メニエール病の一般人口での有病率は0.1%と、良性発作性頭位めまい症に比べるとかなり低いとされています。

まれに、命に関わるめまいが混じっている

一方で、めまいの中には、脳の血管の病気(脳卒中)が原因になっているものも、まれに含まれます。

めまいで救急外来を受診した人全体のうち、15%超は危険な原因とされ、脳卒中は3〜5%と報告されています。ただし、急性で持続する激しいめまい(数時間以上続き、じっとしていても治まらないタイプ)に絞ると、約25%が脳卒中という報告もあります。そのうち96%は脳の血管が詰まるタイプ(脳梗塞)です。

このタイプのめまいを起こす脳卒中は、脳の中でもバランスに関わる部位(延髄の外側や小脳、あるいは耳の奥にある内耳そのもの)への血流が途絶えることで起こるとされています。厄介なのは、こうした脳卒中による激しいめまいが、本格的に起こる前の数週間から数か月のあいだに、自然に治まる短いめまいの発作を繰り返していることがある、とされている点です。「前にも軽いめまいがあったから今回も大丈夫」とは言い切れません。

医師の診察では、頭部を素早く動かして眼の動きを見る検査や、眼の揺れ(眼振)のパターンを見る検査などを組み合わせることで、発症早期のMRIよりも脳卒中を見つけやすいという報告があります。

ただし、この検査は万能ではありません。専門的なトレーニングを積んだ医師とそうでない医師とで、判定結果の解釈が分かれることが指摘されており、限られた指導だけでは十分な精度が得られるとは限らないとされています。

ここまでに出てきた代表的な原因を、頻度・緊急性の観点で整理すると、次の表のようになります(症状の経過は、後述の図解で扱います)。

疾患頻度の目安緊急性
良性発作性頭位めまい症(BPPV)生涯有病率2.4%
救急外来のめまい受診の約10%
低い
前庭神経炎年間発生率 人口10万人あたり約18-48人低い
メニエール病一般人口の有病率0.1%低い
脳卒中めまいで救急外来を受診した人の3-5%
持続する激しいめまいに限ると約25%
高い(唯一、緊急対応が必要)
出典: von Brevern M, et al. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2007 Jul;78(7):710-5. PMID: 17135456. / Mandalà M, et al. Front Neurol. 2023 May;14:1177621. PMID: 37273688. / Newman-Toker DE, et al. Neurol Clin. 2015 Aug;33(3):577-99. PMID: 26231273. のデータをもとに作成

表中の数値は、対象(一般人口か、救急外来を受診した人か)や指標(有病率・発生率・受診者に占める割合)が研究によって異なるため、単純に大小を比較できるものではありません。また、めまいの原因は非常に幅広く、単独で全体の5〜10%を超えるものはないとされている点もあらためて押さえておいてください。

耳にも脳にも異常が見つからないのに続くめまい

検査をしても耳にも脳にも異常が見つからないのに、めまいのような症状が続くこともあります。

こうした状態には、持続性姿勢知覚めまい症という国際的な診断名がついています。国際前庭疾患分類委員会(Bárány Society)の診断基準では、3か月以上ほぼ毎日、浮動感や不安定感が続き、立っている・体を動かす・人混みや画面を見るといった状況で症状が強まることが特徴とされています。多くの場合、良性発作性頭位めまい症や前庭神経炎など何らかのめまいの発作をきっかけに始まり、そのきっかけが治まったあとも症状だけが残るという経過をたどるとされています。

検査で耳や脳に異常が見つからないと、「異常なし」で片づけられてしまいがちですが、症状そのものは実際に続いています。これは「気のせい」や「精神的なもの」ではなく、国際的な基準に基づいて定義された疾患概念です。

こうした症状があるときは、早めに受診してください

めまいで救急外来を受診する人のうち、脳卒中の有病率は3〜5%にとどまります。多くの場合、緊急性の高い病気ではありません。

そのうえで、次のようなめまいでは、救急車の要請が推奨されています。

こんなめまいには、救急車の要請が推奨されています

  • 突然起きた、これまで経験したことのない激しいめまい
  • めまいに、ろれつが回らない・飲み込みにくい・声が出しにくいなどの症状を伴う場合
  • めまいに、物が二重に見える症状を伴う場合
  • めまいに、手足の動きがぎこちない・まっすぐ歩けないなどの症状を伴う場合
  • めまいに、これまでにない激しい頭痛、とくに首の後ろの激しい痛みを伴う場合
  • めまいに、意識がもうろうとする・呼びかけへの反応が鈍いといった症状を伴う場合

一方で、これらの症状がないからといって、安心できるとも限りません。脳卒中によるめまいでも、上記のような随伴症状を伴わず、めまいだけが症状であるケースがあるとされ、症状の組み合わせだけで完全に除外することはできません。

“グルグル”か”フワフワ”かより、医師が知りたいこと

めまいのタイミングによって考えられる主な原因を示す図解。数秒〜数十秒の短い発作を頭を動かすたびに繰り返す場合は良性発作性頭位めまい症を、数時間〜半日以上続く単発の激しいめまいは前庭神経炎、まれに脳卒中を、数分〜数時間の発作を繰り返す場合はメニエール病・前庭性片頭痛を、それぞれ示唆することを示す。
出典: Newman-Toker DE, et al. Neurol Clin. 2015 Aug;33(3):577-99. PMID: 26231273. のTiTrATEの枠組みをもとに作成

ここまでの内容を踏まえると、「めまいの感じ方」よりも重要な情報が見えてきます。

従来、めまいは「グルグル回る感じ(回転性)」か「フワフワ浮く感じ(浮動性)」かで原因を絞り込む考え方が一般的でした。しかし、患者本人の表現は状況によって揺れやすく、この感じ方だけで原因を絞り込む方法は臨床的な有用性が限られると指摘されています。

代わりに医師が重視するのは、①いつから、どれくらい続いているか(タイミング)と、②何がきっかけで起きるか(誘因)の2つです。

タイミングでいえば、数秒から数十秒の短い発作を頭を動かすたびに繰り返す場合は良性発作性頭位めまい症を、数時間から半日以上続く単発の激しいめまいは前庭神経炎や、まれに脳卒中を、数分から数時間の発作を繰り返す場合はメニエール病や前庭性片頭痛を、それぞれ示唆するとされています。

誘因でいえば、寝返りを打つ・見上げるなど頭を動かしたときに誘発されるのか、立ち上がったときに誘発されるのか、それとも特にきっかけがなく突然起きるのかによって、考えられる原因が変わってきます。

こうしたタイミングと誘因の組み合わせから、医師は的を絞った診察(眼球の動きの検査など)を選ぶという診療の流れが提唱されています。

受診前の状況整理

伝えておきたいこと

  1. いつから、どれくらいの間続いているか(数秒か、数時間か、繰り返すか)
  2. 何をしているときに起きるか(頭を動かしたとき、立ち上がったとき、特にきっかけがないときなど)
  3. 一緒に出ている症状(耳鳴り・難聴、頭痛、ろれつが回らない、物が二重に見えるなど)

このほか、次のことを伝えられると、診察がスムーズになります。

  • 既往歴(高血圧・糖尿病・不整脈・片頭痛など)と、服用中の薬(降圧薬、利尿薬など、めまいに関わることがある薬)
  • 過去に同じようなめまいを経験したことがあるか(初めてなのか、繰り返しているのか)
  • 本人がいちばん気になっていること(「以前も同じことがあった」「初めてで不安」など)

これらは網羅的な問診票ではありません。準備ができていないと診察が悪くなる、という話でもありません。あくまで、限られた診察時間の中で、医師との会話がスムーズになる材料です。

この記事だけで自己判断をしないでください。突然の激しいめまいに、ろれつが回らない・物が二重に見えるなどの症状を伴う場合は、救急車の要請が推奨されています。

出典

出典の選び方については編集方針をご覧ください。

  • Newman-Toker DE, et al. Neurol Clin. 2015 Aug;33(3):577-99. PMID: 26231273.
  • von Brevern M, et al. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2007 Jul;78(7):710-5. PMID: 17135456.
  • Imai T, et al. Auris Nasus Larynx. 2026 Aug;53(4):554-557. PMID: 42259062.
  • Kattah JC, et al. Stroke. 2009 Nov;40(11):3504-10. PMID: 19762709.
  • Edlow JA, et al. Acad Emerg Med. 2023 May;30(5):442-486. PMID: 37166022.
  • Staab JP, et al. J Vestib Res. 2017;27(4):191-208. PMID: 29036855.
  • Mandalà M, et al. Front Neurol. 2023 May;14:1177621. PMID: 37273688.

本記事の内容は一般的な医学情報であり、個別の診断や治療の助言ではありません。免責事項もあわせてご確認ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次