■原因と頻度のデータ💻
・MASLD / MASH(いわゆる脂肪肝):健康診断を受けた日本人の男性30.3%、女性16.1%
・アルコール性肝障害(ALD):健康診断を受けた日本人の約1%
・薬剤性肝障害(DILI):詳細なデータなし
・ウイルス性肝炎:B型肝炎ウイルス(HBV)持続感染は日本人の約0.7%、C型肝炎ウイルス(HCV)感染症は約0.1-0.5% (2020年時点)
※代謝機能障害およびアルコール関連脂肪肝疾患(MetALD):健康診断を受けた日本人の約2%
■各病気で知っておくべきこと💡
・MASLD/MASH:将来の死因の第1位は「心筋梗塞や脳卒中」、第2位は「大腸がんや乳がん」など肝臓以外のがん。
・アルコール性肝障害:進行すると肝硬変や肝細胞癌に至る。また飲酒量の増加、感染症などを契機に急性アルコール性肝炎(AHE)を発症すると死亡率が跳ね上がる。
・薬剤性肝障害:健康食品やサプリメントによるものは中止後も数ヶ月にわたって肝機能異常が遷延したり、最悪のケースでは急性肝不全(劇症肝炎)へ移行するリスクが報告されている。
・ウイルス性肝炎:B型肝炎やC型肝炎は薬で治療可能。
■考えるべきこと💊
・生活習慣病(糖尿病、高血圧、コレステロール等)の治療と、定期的ながん検診を受けることが大切。
・適切な飲酒コントロール。依存症が疑われる場合には精神科受診も検討。
・普段飲んでいる薬やサプリメントを確認。
・ウイルス感染の可能性も考慮し、必要に応じて血液検査で確認。
■文献📚
Sato A et al, Medicina (Kaunas). 2024 Aug 16;60(8):1330.
Miwa T et al, J Clin Med. 2024 Feb 19;13(4):1158.
Takikawa H et al, Hepatol Res. 2009 May;39(5):427-31.
Tanaka J et al, Lancet Reg Health West Pac. 2022 Mar 16;22:100428.
Chayama K et al, J Gastroenterol. 2018 Apr;53(4):557-565.
Zhong L et al, Ther Adv Chronic Dis. 2022 May 19;13:20406223221083508.
解説
健康診断で「肝臓の数値」が引っかかったら?お酒を飲まない人も必見の「脂肪肝」の新常識
「健康診断の結果を見たら、肝臓の数値が悪かった…」
実はこれ、決して珍しいことではありません。
現在、日本人男性のおよそ3人に1人が「MASLD / MASH」と呼ばれる、いわゆる「脂肪肝」だと言われています。「そんなに多いの!?」と驚かれるかもしれませんが、実際に外来でも、健診をきっかけに受診される方が非常に増えています。
「みんな結構お酒を飲むんだなぁ」と思った方、実はそれが大きな誤解です。
お酒をまったく飲まなくても、脂肪肝にはなります。
しかも脂肪肝は、放置すると肝臓だけでなく、心臓の病気やがんのリスクにもつながる要注意サイン。今回は、医療の知識がなくても分かる「肝臓の数値異常」の正体と、今日からできる対策を分かりやすく解説します。
1. お酒を飲まないのに!? 進化した脂肪肝「MASLD / MASH」
これまで脂肪肝といえばアルコールのイメージが強かったのですが、現在は世界的な基準が変わり、「生活習慣病(代謝の異常)が原因の脂肪肝」を明確に区別するようになりました。
・MASLD(マッスルド)とは?
お酒の飲みすぎではなく、肥満、高血糖(糖尿病)、高血圧、脂質異常症などの「代謝の異常」が背景にあって、肝臓に脂肪が溜まる病気です。
・MASH(マッシュ)とは?
MASLDがさらに進行し、肝臓に炎症が起きたり、細胞がダメージを受けたりしている深刻な状態です。
⚠️ ここが怖い!
初期の自覚症状はほぼゼロ:気づかないうちに進行します。
薬では治らない:基本的には薬物治療ではなく、生活習慣の改善が不可欠です。
放置すると大病に?:一部は、肝硬変や肝がんへと進行するリスクがあります。
💡 驚きの事実:将来の危険は「肝臓以外」にも!
脂肪肝がある人の将来の死因を調べると、実は第1位が「心筋梗塞や脳卒中」、第2位が「大腸がんや乳がん」などの肝臓以外のがんというデータがあります。
これは脂肪肝が直接の原因というわけではなく、背景にある「生活習慣の乱れ(代謝の異常)」が、これらすべての病気を引き起こす共通の引き金になっているからです。
🚨 対策
生活習慣を整えてこれらの病気を予防すると同時に、定期的な「がん検診」をセットで受けて早期発見に努めましょう。
2. お酒が原因の「アルコール性肝障害(ALD)」
一方で、やはりお酒の飲みすぎによる肝障害も無視できません。
目安として、「純エタノール換算で毎日60g以上のお酒を5年間飲み続ける」と、アルコール性肝障害のリスクが跳ね上がります。
🍺 「純エタノール60g」の具体例(1日あたり)
ビール: 1,500ml(大瓶2.5本)
日本酒(15%): 500ml(約2.8合)
缶チューハイ(7%): 約1,000ml(350ml缶 3本)
「自分はちょっとこれより少ないから大丈夫」と思った方も油断は禁物です。
🚨 知っておきたいリスクと対策
・突然命に関わることも:過度な飲酒や感染症をきっかけに「急性アルコール性肝炎」を起こすと、死亡率が急激に高まります。
・長年のダメージ:慢性的に続くと、肝硬変から肝がんへと進行します。
・治療の基本は一にも二にも「禁酒」:禁酒をしなければ、どんな薬も効果はありません(依存症がある場合は、禁酒をサポートするお薬を使うこともあります)。
※最近注目されている「MetALD(メトエーエルディー)」とは?
「生活習慣病(代謝異常)の背景」があり、さらに「適度な量を超える飲酒(男性1日30g、女性20g以上=ビール中瓶1本強程度)」をしているタイプです。
純粋な脂肪肝よりも肝臓の線維化のスピードが早いため、より厳格な生活改善と減酒・禁酒が必要です。
3. 市販薬やサプリも原因に!?「薬剤性肝障害」
「病院で薬なんて処方されていないから、自分には関係ない」と思っていませんか?
実は、病院の薬以外でも肝臓に大きな負担がかかるケースが増えています。
原因になりやすい身近なものとして、市販の健康食品、サプリメント(ウコンなど)、プロテイン、海外製のダイエット食品、市販の解熱鎮痛薬などが知られています。
健康食品やサプリによる肝障害は、使用をやめてから数ヶ月間も数値が戻らなかったり、最悪のケースでは急激に肝不全(劇症肝炎)に陥ったりするリスクが報告されています。
🚨 対策
健診で肝臓の数値を指摘された際は、病院の処方薬だけでなく、普段飲んでいるサプリやプロテイン、市販薬もすべて医師に伝えるようにしてください。
4. 特効薬がある!「ウイルス性肝炎」
慢性的に肝臓の数値が悪くなる原因として、B型肝炎(HBV)やC型肝炎(HCV)といったウイルスの感染が挙げられます。主な感染経路は、血液を介したものや、性交渉などです。
「ウイルス」と聞くと怖いイメージがあるかもしれませんが、現在の医療では非常に優れた特効薬(治療法)が確立されています。
🚨 対策
健診でウイルス陽性を指摘されたからといって、すぐに重い病気になるわけではありません。あるいは治療が必要とも限りません。まずは怖がらずに専門医を受診し、詳しい追加検査や治療について相談しましょう。
まとめ:健診の結果を「健康へのチャンス」に変えよう
肝臓の数値が悪くなる原因は、お酒、生活習慣、サプリ、ウイルスなど様々です。共通して言える最も大切なことは、「自覚症状がないからと放置しないこと」です。
健診の結果は、体が発してくれた「これまでの生活を見直してね」という大切なサイン。ぜひ一度、お近くの医療機関を受診して、医師と一緒にこれからの対策を考えていきましょう。
注意点・免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、医師の診断や治療に代わるものではありません。個別具体的な症状については、必ず医療機関にご相談ください。万が一、激しい胸の痛みなど緊急を要する症状がある場合は、直ちに救急車を要請してください。


コメント