体の片側だけにピリピリとした痛みが走り、数日後には赤い発疹が帯のように連なって出てくる——帯状疱疹は、子どものころにかかった水ぼうそう(水痘)のウイルスが、何十年も経ってから体の中で再び動き出すことで起こります。
誰にでも起こりうる病気ですが、加齢や特定の持病があると、かかりやすさが変わってくるとされています。2025年度からは、予防のためのワクチンが定期接種の対象にもなりました。
ここでは、かかりやすさの目安や、予防のためのワクチンの種類と制度を整理します。
この記事の要点
- 帯状疱疹は生涯のうちに約3人に1人がかかるとされる、水痘ウイルスの再活性化で起こる病気。
- 高血圧・糖尿病・慢性腎臓病があると、帯状疱疹の発症リスクが高いという報告がある。
- 予防には生ワクチンと組換え(不活化)ワクチンがあり、効果の強さ・持続期間・副反応の出方が異なる。
- 2025年度(令和7年度)から、65歳を中心に定期接種が始まった。対象年齢は全国一律だが、自己負担額は自治体により異なる。
- 受診の目安:皮疹や体の片側の痛みに気づいたら、早めの受診がすすめられている。
それぞれ、順を追って説明します。
帯状疱疹の原因と症状
帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)という、子どものころの水ぼうそうの原因になるウイルスによって起こります。水ぼうそうが治った後もこのウイルスは体から消えず、体の中の神経の集まり(神経節)に潜んだままになります。加齢や体調不良などをきっかけに免疫の働きが落ちると、潜んでいたウイルスが再び活動を始め、その神経に沿って皮膚に症状が出てきます。とくに、ウイルスの再活性化を抑える働き(細胞性免疫)は年齢とともに弱くなりやすいとされ、これが加齢によって帯状疱疹が増える主な理由の一つと考えられています。
発疹が出る2〜3日ほど前から、体のだるさや頭痛、微熱、皮膚のピリピリした違和感が先に現れることがあります。その後、体の片側、1本の神経が受け持つ範囲に沿って赤い発疹が現れ、水ぶくれになり、7〜10日ほどでかさぶたになっていくという経過をたどります。発症率は、北米・欧州・アジア太平洋地域の疫学データをまとめた報告では、年間1,000人あたり3〜5人程度とされています。
皮疹が治まったあとも、痛みだけが長く残ることがあり、これを帯状疱疹後神経痛(PHN)と呼びます。研究によって幅がありますが、およそ5人に1人前後にみられるとされ、痛みが1年以上続く人も一定数いると報告されています。
かかりやすくなる要因
加齢と生涯リスク
帯状疱疹は、一般集団における生涯リスクがおよそ30%と推定されており、50歳以降で発症が急に増えるとされています。同様に、中国・北京の人口データをもとにした数理モデルでも、生涯を通じた累積リスクは32.4%と推計されています。これらの数値から、この記事では「生涯のうちに約3人に1人がかかる」という表現を使っています。
日本の厚生労働省の資料では、帯状疱疹は70歳代での発症がもっとも多いと説明されています。
高血圧・糖尿病・慢性腎臓病との関連
日本国内で55,492名を追跡した後ろ向きコホート研究では、基礎疾患がある人ほど帯状疱疹の発症が多いという関連が報告されています。具体的には、高血圧がある人は調整ハザード比2.04(95%信頼区間 1.75-2.38)、糖尿病がある人は2.44(95%信頼区間 2.10-2.85)、腎不全がある人は2.14(95%信頼区間 1.65-2.79)と、いずれも統計的に意味のある関連がみられました。
これは観察研究の結果であり、「高血圧や糖尿病が原因で帯状疱疹になる」ということまでは示していません。あくまで、これらの持病がある人で帯状疱疹の発症が統計的に多く観察された、という関連にとどまります。また、この研究は単一の医療機関のカルテデータに基づくもので、実際に「何%の人が帯状疱疹になるか」という絶対的な数値までは示されていません。

こうした症状があるときは、早めに受診してください
体の片側にピリピリ・チクチクとした痛みや違和感、体のだるさ、頭痛、微熱を感じ、その後同じ側に赤い発疹や水ぶくれが帯状に現れたら、帯状疱疹の可能性があります。治療に使われる抗ウイルス薬は発疹が出てから72時間以内に始めることが望ましいとされているため、思い当たる症状に気づいたら、できるだけ早く医療機関を受診することがすすめられます。
ワクチンの種類と効果の違い
帯状疱疹を防ぐワクチンには、生ワクチンと組換え(不活化)ワクチンの2種類があります。生ワクチンは、毒性を弱めた生きたウイルスを使う方式です。一方、組換えワクチンは、ウイルスの表面にあるたんぱく質の一部を遺伝子組換え技術で人工的に作り、免疫の働きを高める添加物(アジュバント)と組み合わせて接種する方式で、生きたウイルスは含まれていません。この作り方の違いが、効果の強さや接種のしかた、副反応の出やすさの違いにつながっています。
| 項目 | 生ワクチン(乾燥弱毒生水痘ワクチン) | 組換え(不活化)ワクチン (シングリックス®) |
|---|---|---|
| 接種方法・回数 | 皮下注射、1回 | 筋肉内注射、通常2か月以上あけて2回 |
| 発症予防効果 | 接種後1年で6割程度、5年で4割程度 | 接種後1年で9割以上、5年で9割程度、10年で7割程度 |
| 帯状疱疹後神経痛の予防効果 | 接種後3年で6割程度 | 接種後3年で9割以上 |
| 主な副反応 | 発赤・かゆみ・熱感・腫れ・痛み・しこりなど | 痛み・発赤・筋肉痛・だるさ・頭痛など(頻度は生ワクチンより高い) |
| 接種できない・注意が必要な人 | 免疫の働きが低下している人は接種不可 | 免疫の状態を問わず接種可能(血小板減少症の人や抗凝固薬を使用中の人などは注意) |
生ワクチンの特徴
生ワクチンは、水ぼうそうワクチンを弱毒化したもので、皮下に1回接種します。海外の26件の無作為化比較試験(合計90,259名)をまとめたコクランレビューでは、発症リスクを相対リスク0.49(95%信頼区間 0.43-0.56)に下げる、つまりおよそ半分に減らす効果が示されています。一方で、ウイルスを弱毒化してはいるものの生きたウイルスを使うため、免疫の働きが低下している人には接種できません。
組換え(不活化)ワクチンの特徴
組換えワクチンは、ウイルスの一部のたんぱく質を使った不活化ワクチンで、通常2か月以上の間隔をあけて2回、筋肉内に接種します。同じコクランレビューでは、発症リスクを相対リスク0.08(95%信頼区間 0.03-0.23)に下げる、つまりおよそ9割減らす効果が示されており、生ワクチンより効果が大きいとされています。生きたウイルスを使わないため、免疫の働きが低下している人にも接種できます。ただし、注射した部位の痛みや発赤、全身のだるさなどの副反応は、生ワクチンより高い頻度でみられます。
長期的な効果についても報告があり、追跡期間が平均5〜7年(一部8年目まで)の海外の追跡研究では、8年目時点でも80%台の予防効果が保たれていたとされています(この研究の著者にはワクチンを製造する企業の社員が含まれています)。日本国内の実際の診療データを用いた研究でも、有効性はおよそ85%と報告されています。
定期接種の対象者と自己負担
厚生労働省の資料によると、日本では2025年度(令和7年度)から、帯状疱疹ワクチンが定期接種(個人の発症予防を主な目的とするB類疾病)に加わりました。定期接種にはA類疾病とB類疾病があり、A類は集団予防を主な目的とするのに対し、B類は個人の発症予防を主な目的としています。帯状疱疹ワクチンはB類に位置づけられているため、A類のような接種の努力義務はなく、受けるかどうかは本人の判断に委ねられています。基本の対象は、その年度内に65歳になる人、および60〜64歳でHIV感染により免疫の働きに著しい障害がある人です。
あわせて、令和7年度から11年度までの5年間は経過措置として、その年度内に70・75・80・85・90・95・100歳になる人も対象になります(令和7年度に限り、100歳以上の人は全員が対象)。
自己負担額は、全国一律ではなく市区町村ごとに決められています。一例として、兵庫県尼崎市の案内では、生ワクチンが4,000円、組換えワクチンが11,000円×2回とされています(生活保護受給者などは無料)。実際の金額や助成の内容は、お住まいの自治体に確認してください。
定期接種の対象外の場合(任意接種)
定期接種の対象年齢に当てはまらない人が予防のためにワクチンを受ける場合は、任意接種となり、原則として全額自己負担になります。費用は医療機関によって異なりますが、目安として、生ワクチンはおよそ8,000円前後、組換えワクチンは1回2〜3万円程度(2回接種で4〜6万円程度)という価格帯が、複数の自治体・医療機関の案内でみられます。自治体によっては、任意接種にも独自の助成を設けている場合があるので、お住まいの自治体の窓口で確認するとよいでしょう。自分が定期接種の対象にあたるかどうかも、居住する市区町村からの案内やホームページで確認できます。
ワクチンを考えるときに知っておきたいこと
ここまで見てきたように、生ワクチンと組換えワクチンは、発症を防ぐ効果の強さや持続期間、副反応の出やすさ、費用に違いがあります。組換えワクチンのほうが予防効果は高く長く続くとされる一方、副反応の頻度も高めです。免疫の働きが低下している人は、選択肢が組換えワクチンに限られます。
たとえば、副反応の少なさを重視するか、予防効果の高さや持続期間の長さを重視するかによって、考え方は変わってきます。どちらのワクチンを選ぶか、あるいは接種するかどうかは、こうした効果・副反応・費用のバランスと、本人の持病や体調を踏まえて考える材料になります。個別の判断は、かかりつけ医と相談しながら決めるとよいでしょう。
受診前の状況整理
ワクチン接種や治療について相談する際、次のようなことを伝えられるように整理しておくと、診察がスムーズになります。
診察室で伝えておきたいこと
- 高血圧・糖尿病・慢性腎臓病などの基礎疾患と、服用中の薬(とくにステロイドや免疫を抑える薬)
- 水ぼうそうにかかったことがあるか、水痘ワクチンを受けたことがあるか、過去に帯状疱疹にかかったことがあるか
- ワクチン接種について気になること(費用、副反応、接種のタイミングなど)
この記事だけで自己判断をしないでください。
出典
出典の選び方については編集方針をご覧ください。
- Kawai K, et al. BMJ Open. 2014 Jun;4(6):e004833. PMID: 24916088.
- Lee C, et al. Public Health Pract (Oxf). 2023 Jan;5:100356. PMID: 36968763.
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- Saguil A, et al. Am Fam Physician. 2017 Nov;96(10):656-63. PMID: 29431387.
- de Oliveira Gomes J, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2023 Oct;10(10):CD008858. PMID: 37781954.
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- Ohfuji S, et al. BMC Infect Dis. 2025 Aug;25(1):985. PMID: 40764905.
- 厚生労働省.帯状疱疹ワクチンの定期接種を実施します(リーフレット).2025.
- 厚生労働省.帯状疱疹の予防接種についての説明書.2025.
- 尼崎市.帯状疱疹の定期予防接種.2026.
本記事の内容は一般的な医学情報であり、個別の診断や治療の助言ではありません。免責事項もあわせてご確認ください。

