メタボリックシンドロームと言われたら — 診断基準の意味と、放置したときのリスク

健診結果表に「メタボリックシンドローム」または「メタボリックシンドローム予備群」と書かれていた。あるいは、腹囲を測られて「内臓脂肪が多いですね」と言われた。痛みも自覚症状もないのに、なぜここまで重要視されているのか疑問に思うかもしれません。

メタボリックシンドロームは、内臓脂肪の蓄積を中心に、血圧・血糖・脂質の基準に当てはまるかどうかで判定される状態です。それ自体に症状はありませんが、放置した場合の心血管疾患リスクとの関連が、国内外のデータで示されています。この記事では、診断基準の意味、放置した場合のリスク、健診後に案内される制度、そして食事・運動での工夫を順に整理します。

この記事の要点

  • 特定健診受診者の29.0%(男性42.4%、女性12.9%)が、メタボリックシンドローム該当者または予備群。珍しいことではない。
  • 診断の中心は内臓脂肪の蓄積(腹囲)。そこに血圧・血糖・脂質のうち2項目以上が基準を超えると診断される。
  • 放置した場合、心血管死のリスクが約1.4倍という報告がある。喫煙が重なるとリスクはさらに上がる。
  • 健診結果によっては、40〜74歳を対象に特定保健指導の案内が届く。支援の内容は、腹囲やリスクの数に応じて2段階に分かれる。
  • 生活習慣の見直しでは、体重5%程度の減量で内臓脂肪が10%以上減ったという報告がある。
  • 野菜・果物・魚介類・納豆・厚揚げの摂取が多い食事パターンが、メタボリックシンドロームの低い有病率と関連する。
  • 受診の目安:メタボリックシンドロームの指摘そのもので急いで受診する必要はまれ。ただし「突然」顔が歪む・手に力が入らない・呂律が回らない、または胸の痛みや不快感が現れたときは、救急要請が推奨される。

それぞれ、順を追って説明します。

目次

メタボリックシンドロームの頻度

まず、これがどれくらいありふれたことなのかを見ておきます。

厚生労働省が公表した特定健診・特定保健指導の実施状況(2022年度)によると、2022年度に特定健診を受診した約3,017万人(40〜74歳)のうち、メタボリックシンドローム該当者及び予備群は875万8,151人、割合にすると29.0%(年齢調整後28.1%)でした。男女差が大きく、男性42.4%(年齢調整後43.4%)に対し、女性は12.9%(年齢調整後13.3%)です。この数値は該当者と予備群を合算した割合で、両者を分けた全国集計は今回確認できていません。

2008年度の該当者・予備群の割合と比較すると、2022年度までの減少率は16.1%でした。国が掲げる目標は25%以上の減少なので、まだ届いていません。

自分だけがそうなのではない、ということを踏まえたうえで、次はこの判定がどんな基準で行われているのかを見ていきます。

診断基準の考え方 — 内臓脂肪の蓄積が中心

メタボリックシンドロームは、次のような基準で判定されています。2005年にメタボリックシンドローム診断基準検討委員会(8学会合同)が示した基準では、内臓脂肪の蓄積(腹囲)を必須項目とし、そこに血圧・血糖・脂質のうち2項目以上が基準を超えると診断されます。

  • 腹囲: 男性85cm以上・女性90cm以上
  • 血圧: 収縮期130mmHg以上または拡張期85mmHg以上
  • 血糖: 空腹時110mg/dl以上
  • 脂質: 中性脂肪150mg/dl以上またはHDLコレステロール(善玉コレステロール)40mg/dl未満
メタボリックシンドロームの診断基準を示す分類図。必須項目である内臓脂肪の蓄積(腹囲、男性85cm以上・女性90cm以上)に加えて、血圧・血糖・脂質のうち2項目以上が基準を超えると診断される。
出典: メタボリックシンドローム診断基準検討委員会. 日本内科学会雑誌. 2005;94(4):794-809. のデータをもとに作成

男女で腹囲の基準値が違うのは、体格そのものの違いを表しているわけではありません。「内臓脂肪面積100cm²相当」という共通の換算値を、男女別の体型データから逆算して腹囲の数値に置き換えているため、結果として男女で異なる基準値になっています。

この基準は8学会合同の委員会によるコンセンサス基準(診療ガイドラインの一種)であり、個々の臨床研究のようなエビデンスレベルには分類されません。

なお、後述する特定保健指導の階層化基準は、血糖のカットオフ値がこれとは異なります(空腹時100mg/dl以上)。「メタボリックシンドロームと診断される基準」と「保健指導の対象になるかを判定する基準」は別のものなので、この記事でも章ごとに分けて扱います。

この基準がなぜ設定されているかというと、放置した場合の心血管疾患リスクとの関連が指摘されているためです。

放置した場合の心血管疾患リスク

メタボリックシンドロームの有無と死亡リスク、および喫煙が重なった場合の心血管疾患リスクを示す比較図。メタボリックシンドローム該当者は非該当者と比べて心血管死のハザード比1.39、全死因のハザード比1.08。メタボリックシンドロームと喫煙がともにある場合、どちらもない場合と比べて心血管疾患のハザード比は6.45。いずれも観察研究による関連であり因果を示すものではない。
出典: Iseki K, et al. Intern Med. 2020 Nov;59(21):2671-8. PMID: 32669499. / Hu H, et al. J Atheroscler Thromb. 2026 Feb;33(2):181-94. PMID: 40887303. のデータをもとに作成

全国7地区の特定健診参加者664,926人を追跡した前向きコホート研究において、年齢・性・喫煙・飲酒・既往歴で調整したハザード比は、メタボリックシンドローム非該当を基準として、該当者で心血管死1.39(95%CI 1.22-1.58)、全死因1.08(95%CI 1.02-1.15)でした。

ハザード比とは、比べた2つの群のあいだで、その出来事がどれだけ起こりやすいかを表す指標で、1より大きいほど起こりやすいことを意味します。今回の場合は、「年齢や喫煙・飲酒などの影響を差し引いても、メタボリックシンドロームに該当する人は、そうでない人に比べて心血管系の病気で亡くなるリスクが高いという関連が確認された(約1.4倍)」ということです。

さらに喫煙という別の生活習慣要因が重なると、リスクは単純な足し算を超えて上がるという報告があります。就労者68,743人を平均7.2年追跡した研究では、喫煙あり・メタボリックシンドロームありの群は、どちらもなしの群と比べて、心血管疾患のハザード比が6.45(95%CI 4.73-8.80)でした。統計的な相乗効果を示す指標(RERI 2.27)も示されており、単純な足し算を超えるリスク上昇であることが示唆されます。ただし、この研究の対象は就労者という比較的健康な集団です。高齢者や非就労者にそのまま当てはめられるかどうかは、留保が必要です。

この研究はいずれも、大勢の人を長期間追いかけて調べた「観察研究」です。観察研究でわかるのは「メタボリックシンドロームがある人ではこの病気が多い」という関連であって、「メタボリックシンドロームがあることが原因で死亡する」と証明したものではありません。「メタボリックシンドロームがあるから危険」ではなく、「メタボリックシンドロームと、喫煙などの他の生活習慣要因が積み重なると、リスクがより大きくなる」という理解が実態に近いといえます。

メタボリックシンドロームそのものは、緊急事態ではありません。ただし、その先につながる病気には、急いで受診すべきサインがあります。

こうした症状があるときは、早めに受診してください

メタボリックシンドロームの指摘そのものは、痛みも症状もなく、その場で何かが起きるものではありません。健診で指摘されても、多くの場合は数週間から数か月かけて対応を考えれば十分です。

ただし、次のような症状が出たときは別です。

脳卒中を疑う症状 —「ACT FAST」

日本脳卒中学会と日本脳卒中協会の資料では、脳卒中を疑うサインとして「ACT FAST」という合い言葉が使われています。次の3つが「突然」現れたときです。

すぐに救急車を呼んでください。

  • 顔(Face) — 顔が歪む。
  • 腕(Arm) — 手に力が入らない。
  • 言葉(Speech) — 呂律が回らない、言葉が出ない、他人の言うことが理解できない。

心筋梗塞を疑う症状

急性冠症候群(心筋梗塞や、その一歩手前の状態をまとめた呼び方)が疑われて救急外来を受診した人を調べた研究では、胸の痛みや不快感が主な訴えだったのは男性91%・女性92%でした。まず胸の症状を疑うのは理にかなっています。ただし、緊急性は痛みの強さや続く時間、ほかの症状を伴うかどうかで変わります。

すぐに救急車を呼んでください。

  • 圧迫感・絞扼感・重苦しさが20分以上続く胸の症状
  • 胸の症状とともに、あご・首・肩・背中・腕に痛みや不快感が広がる場合
  • 胸の症状に、息切れ・冷や汗・吐き気・意識がもうろうとする感じなど、他の症状を伴う場合

気になる数字もあります。急性冠症候群を経験した人のうち、自分の症状を心臓が原因だと結びつけられたのは45.1%でした。半分以上の人は、そのときに心臓の症状だと思っていなかったことになります。

メタボリックシンドロームに自覚症状がないことは、心血管疾患のリスクがないことを意味しません。

特定健康診査・特定保健指導の仕組み

健診結果によっては、「特定保健指導」の案内が届くことがあります。ここでは制度の考え方を整理します。

厚生労働省の手引き(第4版)によれば、対象年齢は40〜74歳(実施年度中に達する年齢)です。

階層化の基準は、次の図のとおりです(「積極的支援」は「動機付け支援」より、面接や継続フォローを伴う手厚い支援です)。

特定保健指導の階層化基準を示す図。腹囲が基準を超えている場合、追加リスク(血糖・脂質・血圧)が2つ以上なら積極的支援、1つの場合は喫煙歴があれば積極的支援、なければ動機付け支援。腹囲は基準以下でもBMIが25以上の場合、追加リスクが3つなら積極的支援、2つの場合は喫煙歴の有無で積極的支援か動機付け支援に分かれ、1つなら動機付け支援。65〜74歳は判定結果にかかわらず一律動機付け支援。
出典: 厚生労働省保険局医療介護連携政策課. 特定健診・特定保健指導の実施状況について(2022年度). 2024. のデータをもとに作成

内臓脂肪の蓄積があるほど、少ないリスク数で積極的支援の対象になる、という設計になっています。腹囲が基準を超えている場合は追加リスク2つで積極的支援の対象になりますが、腹囲は基準以下でBMI25以上の場合は、追加リスク3つが必要です。また、65〜74歳はリスクの数にかかわらず一律「動機付け支援」で、積極的支援の対象にはなりません。なお、すでに生活習慣病の治療薬を服薬している人は、この判定の対象から除外されます。

この表で使う血糖の基準は空腹時100mg/dl以上で、前の章で見たメタボリックシンドロームの診断基準(空腹時110mg/dl以上)とは異なります。健診結果を見るときは、どちらの基準の話をしているのか、意識しておくと混乱しません。

一方で、制度の効果には限定的な面も指摘されています。2015年に心血管の危険因子を1つ以上持つ成人46,975人を対象に、腹囲の基準に基づいて保健指導を受けた群と受けなかった群を比較した研究では、体重や腹囲など肥満に関連する指標は有意に改善しましたが、血圧・血糖・脂質、そして医療費や受診行動には有意差がみられませんでした。

保健指導は体重や腹囲の改善に一定の役割を果たす一方で、それだけで血圧や血糖まで自動的に改善するとは言えない、という水準で理解しておくのが実際的です。保健指導の面接だけに頼らず、日常でできる工夫を知っておくと役立ちます。

食事と運動でできる工夫

ここまでの内容を踏まえて、日常生活で見直せる点を整理します。

減量の目安

1年間の生活習慣介入で、BMI 28.0〜44.8の日本人過体重者235人(40〜64歳)を対象にしたRCTでは、体重が約5%減少し、皮下脂肪・内臓脂肪の断面積は10.8〜17.5%減少しました。対象がBMI28以上とやや高度な肥満者であるため、軽度〜中等度の内臓脂肪蓄積の人にそのまま当てはまるかどうかは留保が必要です。

肥満患者576人を医師の指導下で5年間追跡した研究では、肥満に関連する心血管リスク因子を改善するために、1年時点で体重5.0%減、5年時点で7.5%減が最適な目標とされ、実際に39.1%が5年間で5%以上、24.1%が7.5%以上の減量を達成しました。これは医師の管理下での介入試験の成績であり、自己流の取り組みでそのまま同じ結果が出るとは限りません。

食事パターン

日本人1,092人(35〜69歳)を対象にした研究では、野菜・果物・魚介類・納豆・厚揚げの摂取が多い食事パターンが、メタボリックシンドロームの低い有病率と関連していました。これは横断研究であり、食習慣とメタボリックシンドロームのどちらが先かという前後関係は分かりません。「この食事でメタボリックシンドロームが治る」ではなく、「関連がみられた」という水準の話です。

厳密な制限に取り組むよりも、無理なく続けられる範囲で工夫を積み重ねることが実際的です。

受診前の状況整理

次の受診、あるいは保健指導の面接では、次のことを伝えておくと役立ちます。

伝えておきたいこと

  1. これまでの健診結果の推移(腹囲・血圧・血糖・脂質を複数回分)。リスクの評価や、生活習慣の見直しの効果を判断するときは、一時点の数値だけでなく経過を踏まえて行われます。
  2. 喫煙の有無と本数、飲酒の量。喫煙とメタボリックシンドロームが重なると、心血管疾患のリスクが大きく上がることが本文で示されています。
  3. 心血管疾患の既往、および家族に若くして心筋梗塞・脳卒中になった人がいるか。リスクの評価や、保健指導以外に受診を検討すべきかどうかの判断材料になります。

このほか、いちばん気になっていること(急に痩せろと言われて戸惑っている、保健指導の内容が分からず不安、など)も伝えておくと、診察がかみ合いやすくなります。

この記事だけで自己判断をしないでください。生活習慣の見直しで様子をみるか、医療機関に相談するかは、あなたの状況を知っている医師と一緒に決めるものです。

出典

出典の選び方については編集方針をご覧ください。

  • 厚生労働省保険局医療介護連携政策課. 特定健診・特定保健指導の実施状況について(2022年度). 2024.
  • メタボリックシンドローム診断基準検討委員会. 日本内科学会雑誌. 2005;94(4):794-809.
  • Iseki K, et al. Intern Med. 2020 Nov;59(21):2671-8. PMID: 32669499.
  • Hu H, et al. J Atheroscler Thromb. 2026 Feb;33(2):181-94. PMID: 40887303.
  • 日本脳卒中学会(監修), 日本脳卒中協会(協力). 脳卒中の予防・発症時の対応.
  • Ferry AV, et al. J Am Heart Assoc. 2019 Sep 3;8(17):e012307. PMID: 31431112.
  • Birnbach B, et al. BMC Cardiovasc Disord. 2020 Oct 14;20(1):445. PMID: 33054718.
  • 日本循環器学会ほか合同研究班. 急性冠症候群ガイドライン(2018年改訂版). 2019.
  • 厚生労働省保険局医療介護連携政策課医療費適正化対策推進室. 特定健康診査・特定保健指導の円滑な実施に向けた手引き(第4版). 2023.
  • Li Y, et al. J Glob Health. 2024 Feb;14:04007. PMID: 38334270.
  • Tanaka NI, et al. Asia Pac J Clin Nutr. 2019;28(1):72-8. PMID: 30896417.
  • Yamakage H, et al. Front Endocrinol (Lausanne). 2024;15:1343153. PMID: 38601201.
  • Bahari T, et al. J Epidemiol. 2018 Apr;28(4):194-201. PMID: 29151477.

本記事の内容は一般的な医学情報であり、個別の診断や治療の助言ではありません。免責事項もあわせてご確認ください。

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