65歳の誕生日が近づいて、市区町村から肺炎球菌ワクチンの案内が届いた。けれども、何年か前に一度打った気もする。そんな方も多いのではないでしょうか。
高齢者の肺炎球菌ワクチンは、2026年4月に定期接種で使う種類が変わりました。前に打ったことがあるか、どのように打ったかで、扱いが分かれます。この記事では、新しい定期接種のしくみと、ワクチンで防げることの範囲をまとめます。
この記事の要点
- 2026年4月から、65歳などの定期接種はPCV20の1回に変わった(厚生労働省)。
- 定期接種でPPSV23を打った人は原則対象外だが、1年以上あけて任意接種はできる。
- 自己負担や助成の有無は市区町村ごとに違う。
- 減らすのは含まれる型の肺炎球菌による病気で、肺炎全体の減少は臨床試験で示されていない。
- PCV20で肺炎が減るかを確かめた臨床試験は、まだない。
- 【受診の目安】接種後に気になる症状があれば、接種した医療機関への問い合わせが案内されている(厚生労働省)。
接種を受けるときに医師に伝えること
- これまでに肺炎球菌ワクチンを打ったことがあるか。あれば、いつ、どの種類か(接種済証などの記録や、市区町村からの通知があれば持参する)。
- 定期接種(市区町村の案内)で打ったのか、自費で打ったのか。
- 持病と、服用中の薬。
- 以前のワクチンで、強い反応やアレルギーが出たことがあるか。
- 近いうちに打つ予定のほかのワクチン(インフルエンザ、新型コロナなど)があるか。
受診先の目安
まずは、かかりつけの内科で相談できます。定期接種は、市区町村が案内する医療機関で受けられます。どこで受けられるかは、市区町村の案内で確認できます。
※急ぎではない受診を考えるときの目安です。救急を要する場合は含みません。
この記事だけで自己判断をしないでください。接種歴や持病によって選び方が変わるため、実際の判断には医師や市区町村への確認が必要です。
詳しい解説
ここからは、上のまとめの根拠となるデータを順を追って説明します。
2026年4月からの定期接種
この章では、新しい定期接種の対象と、ワクチンが変わった理由を説明します。
対象と接種の方法
定期接種(法律にもとづいて市区町村が行う予防接種)の対象は、65歳の人です。60〜64歳で、心臓・腎臓・呼吸器の機能やHIVによる免疫の機能に重い障害がある人も対象になります。2026年4月からは、PCV20(商品名プレベナー20)を1回、筋肉内に注射します。過去に肺炎や肺炎球菌の感染症にかかったことがある人も、対象から外れません(厚生労働省)。
高齢者の肺炎球菌ワクチンは「B類疾病」の定期接種で、本人が希望した場合に受けるものです。日本呼吸器学会などの合同委員会がまとめた「考え方」によれば、接種の努力義務はなく、一定の自己負担があります。
ワクチンが変わった理由
これまで定期接種で使われていたのは、PPSV23というワクチンでした。肺炎球菌には、表面のつくりの違いによって、たくさんの「型」(血清型)があり、ワクチンはそのうち一部の型を狙って作られています。同じ「考え方」によれば、2025年10月の国の審議会で、ワクチンがカバーする型の割合、有効性、安全性、費用対効果を踏まえて、PCV20に変えることが決まりました。
このほか、PPSV23については、国内で肺炎を防ぐ効果を確かめられなかった研究もあります。2016〜2019年に日本の65歳以上の肺炎患者を調べた症例対照研究(肺炎の患者142人)では、PPSV23の肺炎を防ぐ効果は示されませんでした。一方で、「考え方」が紹介する国内のデータでは、65歳以上で、PPSV23に含まれる型によるIPD(侵襲性肺炎球菌感染症。血液など、本来は菌のいない場所に菌が入る重い感染症)に対して39.2%、肺炎球菌による肺炎に対して27.4%の有効性が推定されています。
費用と助成の確認先
自己負担の額は、市区町村ごとに異なります。66歳以上で定期接種の対象にならない人に、任意接種の費用を助成しているかどうかも、市区町村によって違います。お住まいの市区町村の予防接種の担当窓口で確認できるほか、厚生労働省の感染症・予防接種相談窓口(0120-995-956)もあります。
接種歴による違い
この章では、前に肺炎球菌ワクチンを打ったかどうか、どのように打ったかで、扱いがどう変わるかを説明します。

以下は、日本呼吸器学会などの「考え方」に示されている扱いです。
まだ打ったことがない65歳の人は、定期接種でPCV20を受けられます。「考え方」は、定期接種の対象の人が定期接種でPCV20を受けられるよう、接種の時期を決めることを勧めています。定期接種の対象にならない未接種の人(66歳以上など)は、任意接種(本人の希望で、原則として自費で受ける接種)でPCV20またはPCV21(2025年8月に国内で承認された、PCV20とは別の種類のワクチン)を打つことが考えられるとされています。
過去に定期接種でPPSV23を打った人は、原則として定期接種の対象になりません。ただし、PPSV23の接種から1年以上あければ、任意接種でPCV20またはPCV21を打つことができます。一方、PPSV23をもう一度打つことは、原則として選択肢としないとされています。
過去に自費で肺炎球菌ワクチンを打ったことがある65歳の人で、市区町村から個別の通知が届いていない場合は、定期接種を受けられるかどうかを市区町村に問い合わせることが望ましいとされています。
なお、PCV20やPCV21を打ったあとの再接種については、現時点で免疫のつき方や安全性のデータはありません。
ワクチンで防げる範囲
この章では、「肺炎球菌ワクチンを打てば肺炎にならないのか」という疑問に、データで答えます。
肺炎の原因は、肺炎球菌だけではありません。そして肺炎球菌のワクチンが狙うのは、含まれている型の肺炎球菌です。
PCV20と同じ「結合型」と呼ばれる種類のワクチンで、肺炎を減らすかを直接確かめた大きな臨床試験に、オランダの65歳以上約8万4千人を、PCV13(PCV20より含まれる型が7つ少ないワクチン)を打つ群と偽薬の群に分けて平均約4年追ったものがあります。メーカーが資金を出したこの試験では、ワクチンの型に合う肺炎はPCV13群で49人、偽薬群で90人と、45.6%少なくなりました。ワクチンの型に合うIPDは75.0%少なくなりました。一方で、原因を問わない肺炎全体では、両群にはっきりした差はありませんでした。
つまり、肺炎球菌のワクチンは「肺炎にならなくなるワクチン」ではなく、「含まれる型の肺炎球菌による肺炎や重い感染症を減らすワクチン」です。試験に参加した約8万4千人のうち、約4年間で型の合う肺炎になった人は、両群あわせて139人でした。
PCV20については、肺炎を減らすかを確かめた臨床試験はまだありません。実際に使われ始めた後のデータとして、「考え方」は米国の研究を紹介しています。メーカーが資金を出した、米国の65歳以上約1,650万人の保険のデータを使った観察研究では、PCV20を打った人で、IPDが25.6%、原因を問わない肺炎が15.2%少ない関連がみられました。10万人が1年過ごすあたりにすると、IPDで12.0件、肺炎で758.0件少ない計算です。
副反応と同時接種
この章では、接種後に起こりうる反応と、ほかのワクチンとの同時接種について説明します。
厚生労働省によれば、PCV20の副反応で多いのは、注射した部分の痛み(59.6%)、筋肉痛(38.2%)、疲れ(30.3%)、頭痛(21.7%)、関節痛(11.6%)です。頻度は不明ですが、ショック・アナフィラキシー(急で強いアレルギー反応)などがみられることもあります。
インフルエンザや新型コロナのワクチンと同時に打った研究をまとめた解析では、肺炎球菌ワクチンを単独で打つ場合と比べて免疫のつき方は劣らず、頭痛や筋肉痛など、軽いものから中くらいの全身の副反応が増えていました。
同じ65歳前後で対象になる帯状疱疹ワクチンについては、帯状疱疹ワクチンの記事で説明しています。
接種後に気になる症状があるとき
下記に該当する場合、接種した医療機関への問い合わせがすすめられています。
- 接種したあとに、気になる症状がある。
これは厚生労働省のページの案内です。接種の前に、気になる症状が出たときの連絡先を医療機関で確認しておくこともできます。
出典
出典の選び方については編集方針をご覧ください。
- 厚生労働省. 高齢者の肺炎球菌ワクチン.
- 日本呼吸器学会ほか合同委員会. 65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第8版). 2026.
- Nakashima K, et al. Vaccine. 2022 Nov 2;40(46):6589-98. PMID: 36184405.
- Bonten MJ, et al. N Engl J Med. 2015 Mar 19;372(12):1114-25. PMID: 25785969.
- Rahimi HK, et al. Vaccine. 2025 Jun 20;59:127293. PMID: 40412334.
本記事の内容は一般的な医学情報であり、個別の診断や接種の助言ではありません。免責事項もあわせてご確認ください。

