健診の結果票に「尿潜血(+)」とあっても、痛みも尿の色の変化もなければ、何を意味するのか分かりにくいものです。
潜血陽性は、そのまま「尿に血が混じっている」という意味ではなく、一時的な要因で陽性になることもあります。
この記事では、潜血陽性と血尿の違い、背景にある病気、男性と女性で異なる注意点を、公表されている資料をもとに整理します。
この記事の要点
- 月経血の混入や激しい運動などで、一時的に陽性になることがある。
- 顕微鏡で分かる血尿で精密検査を受けた人のうち、膀胱がんが見つかったのは約2%。
- 女性は膀胱炎として扱われ、診断が遅れやすいという報告がある。
- 男性は日本のガイドラインで、女性より若い年齢から高めのリスク群に入る。
- 【受診の目安】人間ドック学会の基準では、潜血(+)は再検査、(2+)以上は精密検査の判定。
受診するときに医師に伝えるべきこと
- 健診で採尿した日が月経中や月経の前後だったか、前日に激しい運動をしていなかったか。
- これまでの健診での潜血・たんぱくの結果の推移。膀胱炎と言われた人は、治療後も陽性が続いているか。
- 目で見て分かる赤い尿・茶色い尿が出たことがあるか。
- 体重の変化、関節の痛み、皮疹、かぜのような症状など、最近気になる症状。
- 喫煙歴と、飲んでいる薬(とくに血液をさらさらにする薬)。
受診先の目安
まずは内科で相談できます。腎臓内科や泌尿器科も選択肢になります。
※急ぎではない受診を考えるときの目安です。救急を要する場合は含みません。
この記事だけで自己判断をしないでください。潜血陽性が一時的なものかどうかは、再検査や精密検査で確かめるものです。
詳しい解説
ここからは、上のまとめの根拠となるデータを順を追って説明します。
「潜血陽性」と「血尿」の違い
この章では、潜血陽性が何を意味するのかを説明します。
健診の尿検査では、試験紙を尿にひたして色の変化を見ます。潜血の欄が反応するのは、赤血球そのものではなく、赤血球に含まれるヘモグロビン(酸素を運ぶ赤い色素)が試薬と反応して色が変わるためです。そのため、壊れた赤血球から溶け出したヘモグロビンや、筋肉に含まれるミオグロビンという色素にも反応します。
米国泌尿器科学会のガイドラインをまとめた記事では、試験紙で陽性になった人の少なくとも20%は、顕微鏡で赤血球が見つからないとされています。
本当に血尿かどうかを確かめるのは、尿沈渣(にょうちんさ:尿を遠心して、沈んだ成分を顕微鏡で見る検査)です。日本腎臓学会・日本泌尿器科学会などがまとめた血尿診断ガイドラインでは、尿沈渣で顕微鏡の1視野あたり赤血球5個以上を血尿としています。人間ドック学会の判定区分でも、潜血と尿沈渣の結果が食い違うときは、尿沈渣の結果を優先するとされています。
一時的な要因で陽性になる場合
この章では、病気ではない要因で陽性になる場合と、その確かめ方を説明します。
米国のある総説では、試験紙の潜血が陽性になる要因として、月経血の混入、激しい運動、水分不足などで濃くなった尿などが挙げられています。日本のガイドラインでは、採尿は出始めの尿を流してから途中の尿をとる「中間尿」が原則で、月経中の採尿は原則として避けるとされ、女性ではとり方によって混入が起こりやすいことも指摘されています。
米国泌尿器科学会と日本のガイドラインはいずれも、月経や尿路感染症といった一時的な原因が考えられるときは、それが落ち着いてから尿検査をやり直すとしています。月経が終わってから、運動を控えてから、と条件をそろえて再検査することが確かめ方になります。
ただし、自分の潜血陽性が一時的な要因によるものかどうかは、結果票からは分かりません。前述の総説は、次の点を挙げています。
- 膀胱がんなど尿路のがんによる出血は、出たり止まったりすることが多く、一度陰性になっても否定できない。
- 運動のあとに出た血尿でも、がんが否定できるわけではない。
- 血液をさらさらにする薬(抗凝固薬)を飲んでいても、血尿は尿路の病気の手がかりとして調べる必要がある。
「月経中だったから」「運動したから」と思い当たる場合でも、再検査で確かめることに意味があるのはこのためです。
潜血陽性の背景にある病気
この章では、潜血陽性の背景にある病気を、よくあるものと見逃したくないものに分けて説明します。
健診で潜血陽性になった人全体のうち、どの原因がどのくらいの割合を占めるかを示したデータは、調べた範囲では見つかりませんでした。そのため、割合の順ではなく、2つに分けて示します。
| 主な例 | 確かめ方 | |
|---|---|---|
| よくある原因・一時的な要因 | 月経血の混入、激しい運動、尿路感染症(膀胱炎など)、尿路結石、前立腺肥大 | 原因が落ち着いてからの再検査、尿沈渣 |
| まれだが見逃したくない原因 | 膀胱がんなど尿路のがん、腎臓の病気(糸球体の病気) | 膀胱鏡・画像検査(泌尿器科)、たんぱく尿・腎機能の評価(腎臓内科) |
見逃したくない原因の1つは、膀胱がんなど尿路のがんです。30件の研究、約2万4千人をまとめた解析では、顕微鏡的血尿(目には見えず、顕微鏡で分かる血尿)で精密検査を受けた人のうち、膀胱がんが見つかったのは2.00%(95%信頼区間1.30〜3.09%)でした。この数字は精密検査に回った人を対象にしたもので、健診で潜血陽性になった人全体の数字ではありません。研究ごとに対象や検査のしかたのばらつきが大きい点にも注意が必要です。多くはないものの、ゼロではない、と受け止めるのが実態に近いといえます。
もう1つは、腎臓の糸球体(しきゅうたい:血液をろ過する部分)の病気です。尿にたんぱくも出ている、赤血球の形が変わっている、といった所見があれば、泌尿器科ではなく腎臓内科で調べるのが向いているでしょう。
男性と女性で異なる注意点
この章では、男女それぞれの注意点を説明します。どちらが危ないかではなく、それぞれが気をつけたい点として整理します。
女性の場合
女性は、月経血の混入や採尿のしかたの影響を受けやすく、一時的な要因で陽性になりやすい立場にあります。
一方で、膀胱がんの診断が遅れやすいという報告があります。米国の保険請求データを使った研究では、血尿で受診してから膀胱がんと診断されるまでの平均日数は、女性85.4日、男性73.6日でした。診断までに6か月を超えた割合も、女性17.3%、男性14.1%と女性で高く、女性は尿路感染症と診断されやすい傾向がありました。
膀胱炎の治療を受けたあとも潜血陽性が続く場合は、そのこと自体が医師に伝える材料になります。
男性の場合
日本の血尿診断ガイドラインは、米国泌尿器科学会の分類をもとに、尿路のがんのリスクを低・中・高の3つの群に分け、群ごとに検査の進め方を変えています。年齢でみると、最もリスクの低い群に入るのは男性40歳未満、女性50歳未満で、男性のほうが10歳若い年齢から、膀胱鏡などの検査がすすめられる中リスク群に入ります。60歳以上は男女とも高リスク群で、喫煙歴があることも高リスク群に入る条件の1つです。
健診の判定と精密検査の流れ
人間ドック学会の判定区分では、尿潜血(+)はC判定(要再検査・生活改善)、(2+)以上はD判定(要精密検査・治療)です。C判定は、健診機関が再検査の時期を明記して示すもの、D判定は、精密検査を行うか治療を行うかを紹介先の医療機関が決めるものとされています。結果票の判定は、健診機関がすすめる次の一歩を示しています。
精密検査では、尿沈渣で赤血球の数や形を調べ、腎機能やたんぱく尿もあわせて確認します。そのうえで、腎臓の病気が疑われれば腎臓内科、そうでなければ泌尿器科で調べる、というのが日本のガイドラインの流れです。
たんぱくも陽性だった場合、判定区分では尿たんぱくの判定がD(精密検査)に上がります。詳しくは尿たんぱく陽性の記事で説明しています。
こうした症状があるときは、早めの受診がすすめられる
下記に該当する場合、早めの受診がすすめられます。
- 目で見て分かる赤い尿・茶色い尿(肉眼的血尿)。
目で見て分かる血尿は、日本のガイドラインで、泌尿器科または腎臓の専門医への紹介がすすめられている所見です。
ただし、目で見て分かる血尿があっても、必ずしもがんとは限りません。前述の総説では、肉眼的血尿のある人で泌尿器のがんが見つかるのは約25%とされ、多くはがん以外の原因です。
一方で、目に見える血尿がないから大丈夫ともいえません。尿路のがんによる出血は出たり止まったりすることがあり、顕微鏡で分かる血尿で精密検査を受けた人でも、約2%に膀胱がんが見つかっています。
出典
出典の選び方については編集方針をご覧ください。
- Rao PK, et al. Cleve Clin J Med. 2008 Mar;75(3):227-33. PMID: 18383931.
- Arnold MJ. Am Fam Physician. 2021 Dec;104(6):655-7. PMID: 34913643.
- Waisbrod S, et al. JAMA Netw Open. 2021 May;4(5):e218409. PMID: 33970257.
- Cohn JA, et al. Cancer. 2014 Feb;120(4):555-61. PMID: 24496869.
- 血尿診断ガイドライン改訂委員会(編). 血尿診断ガイドライン2023. ライフサイエンス出版; 2023.
- 日本人間ドック・予防医療学会. 判定区分(2026年4月1日改定). 2026.
本記事の内容は一般的な医学情報であり、個別の診断や治療の助言ではありません。免責事項もあわせてご確認ください。

