検査を受けるときには、その検査がどんな性質をもっているかを知っておくと、結果の受け止め方が変わります。検査の性質を数字で表したものが「感度」と「特異度」です。
本サイトではできるだけ平易な言葉でお伝えするよう心がけていますが、検査の話をするときには、どうしてもこの2つの指標に頼らざるを得ない場面があります。そこで、感度と特異度の読み方をまとめたページを用意しました。
この記事の要点
- 感度は、病気がある人を正しく「陽性」と判定できる割合(見逃しの少なさ)。
- 特異度は、病気がない人を正しく「陰性」と判定できる割合(誤った陽性の少なさ)。
- 陽性の人が本当に病気である割合(陽性的中率)は、受けた集団で変わる。
- 【結果の受け止め方】陽性でも病気とは限らず、陰性でも病気がないとは限らない。検査の性質を踏まえて、医師と結果を確認する。
検査結果を聞くときに確認したいこと
- 陽性・陰性それぞれの場合に、次に何をすることになるか。
- 自分の年齢や症状、持病を踏まえると、この結果をどう受け止めればよいか。
この記事だけで自己判断をしないでください。検査結果をどう受け止め、次に何をするかは、あなたの状況を知っている医師と一緒に決めるものです。
詳しい解説
ここからは、上のまとめの根拠となるデータを順を追って説明します。
感度と特異度の定義
この章では、2つの指標がそれぞれ何を数えているのかを説明します。
検査の結果は「陽性」か「陰性」に分かれますが、実際に病気があるかどうかと必ず一致するわけではありません。病気がないのに陽性と出ることを偽陽性、病気があるのに陰性と出ることを偽陰性(見逃し)といいます。「見逃し」には悪い印象がありますが、検査はもともと完璧なものではなく、見逃しがまったく起こらない検査はほとんどないといっていいでしょう。
感度と特異度は、検査を受けた人を「実際に病気がある人」と「病気がない人」に分け、それぞれのグループの中で検査が正しく判定できた割合を表します。
- 感度: 病気がある人のうち、正しく陽性と判定された割合。高いほど見逃しが少ない。
- 特異度: 病気がない人のうち、正しく陰性と判定された割合。高いほど誤った陽性が少ない。
| 検査の結果 | 病気がある人 | 病気がない人 |
|---|---|---|
| 陽性 | 正しく陽性(真陽性) | 誤って陽性(偽陽性) |
| 陰性 | 見逃し(偽陰性) | 正しく陰性(真陰性) |
| この列で見る指標 | 感度=正しく陽性の割合 | 特異度=正しく陰性の割合 |
実際の数字で見てみます。症状のない1,762人がPET検診(全身のがんを画像で探す検査)を受けた国内の研究では、がんがあった33人のうち28人が陽性と判定されていました。これが感度84.8%です。がんがなかった1,718人のうち1,491人は陰性と判定されており、特異度は86.8%でした。
ただし、この研究は1つの施設で過去の記録を調べたもので、がんがあった人は33人と少ないため、感度の数字には幅があります(95%信頼区間69.1〜93.3%)。
95%信頼区間とは、研究で得られた数字をもとに、本当の値がこのあたりにあると推定される範囲のことです。同じ方法で研究を何度も繰り返したとき、計算される範囲の95%が本当の値を含む、という考え方にもとづいています。対象の人数が多いほど幅は狭くなり、幅が狭いほど数字の確かさは高いと考えられます。
見逃しの少なさと、誤った陽性の少なさ
この章では、感度と特異度の関係と、それぞれが高い検査の使われ方を説明します。
感度と特異度は、一方を上げるともう一方が下がることがあります。「陽性」と判定する基準(カットオフ値)を緩めれば見逃しは減りますが、病気がない人まで陽性と出やすくなるためです。
たとえば、動悸で救急外来を受診した215人を対象にした海外の研究では、年齢や持病などいくつかの項目から、治療が必要な原因を拾い上げる基準が検討されています。この基準は感度96%と見逃しが少ない一方、特異度は38%にとどまりました(1施設・215人のデータです)。
感度の高い検査で陰性であれば、その病気の可能性は低いと考えられるため、病気を除外する目的で使われます(除外診断)。
反対に、特異度の高い検査で陽性であれば病気の可能性は高いため、診断を確定に近づける目的で使われます(確定診断)。
ただし、除外は「可能性がゼロになる」という意味ではありません。先ほどの動悸の研究では、基準に1つも当てはまらなかった54人のうち3人に、治療が必要な不整脈が見つかっていました。

陽性的中率
この章では、検査で陽性と出たときにいちばん気になる「本当に病気なのか」を表す数字を説明します。
陽性的中率とは、検査で陽性と出た人のうち、実際に病気がある人の割合です。先ほどのPET検診の研究では、陽性と判定された277人のうち、実際にがんがあったのは28人で、陽性的中率は10.1%でした。陽性と出た人のおよそ10人に9人は、がんではなかったことになります。
ここで注目していただきたいのは、同じ「28人」を、感度と陽性的中率では違う人数で割っていることです。感度の分母は「がんがあった33人」、陽性的中率の分母は「陽性と出た277人」です。そのため、感度・特異度が80%台の検査でも、陽性と出た人の中でがんがあるのは約1割、ということが起こります。

陽性的中率は、検査の性能だけでなく、検査を受けた集団の中にもともと病気の人がどのくらいいるか(有病率)によって変わります。症状のない人を対象にした検診では、病気の人がもともと少ないため、陽性的中率は低くなりやすいと考えられます。
一方で、陽性的中率が低いことは、陽性の結果を軽く見てよいという意味ではありません。陽性と出た人の中に、実際に病気がある人が含まれていることに変わりはないからです。
対象集団による数字の違い
この章では、同じ検査でも数字が変わる例を紹介します。
感度・特異度も検査に固定された値ではなく、どんな人を対象に調べたかによって変わります。便潜血検査(免疫法)の大腸がんに対する精度を例にとると、一般的なリスクで症状のない人を対象にした米国のまとめでは、感度74%・特異度94%でした。一方、本人や家族に大腸がんの既往があるなど、リスクが平均より高い人を対象にしたまとめでは、感度93%・特異度91%と報告されています。
ただし、後者の感度は幅が大きく(95%信頼区間53〜99%)、この差がどこから来るのかは、これらの研究で直接確かめられたわけではありません。記事で感度・特異度の数字を見かけたときは、「誰を対象にした数字か」もあわせて確認すると、読み違いを防ぎやすくなります。
出典
出典の選び方については編集方針をご覧ください。
- Trevethan R. Front Public Health. 2017;5:307. PMID: 29209603.
- Sengoku T, et al. Int J Clin Oncol. 2014 Dec;19(6):989-97. PMID: 24481919.
- Balen F, et al. CJC Open. 2026 Jul;8(7):796-9. PMID: 42483009.
- Lin JS, et al. JAMA. 2021 May;325(19):1978-98. PMID: 34003220.
- Katsoula A, et al. JAMA Intern Med. 2017 Aug;177(8):1110-8. PMID: 28628706.
- Hazra A. J Thorac Dis. 2017 Oct;9(10):4125-30. PMID: 29268424.
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