熱が下がらない ―風邪と思っていた熱が長引く

のどが痛くて、熱が出た。ただの風邪だと思って様子をみていたのに、何日たっても熱が下がらない。一度は下がったのに、また上がってきた。そんな状態が続くと、「いったい何が原因なのか」と不安になるものです。

この記事で、あなたの熱の原因を言い当てることはできません。その代わりに、長引く熱について医学で分かっていることを紹介し、いま自分がどこにいるのかを落ち着いて整理するための材料をお渡しします。

この記事の要点

  • 調べても原因がわからない長引く熱を、「不明熱」と呼ぶ。
  • 原因は炎症性の病気・感染症・腫瘍など多岐にわたり、日本では炎症性が最多(34.0%)。
  • 約5人に1人は原因がわからないが、その場合の経過は概して良いとされる。
  • 【受診の目安】熱が思ったより長く続く、下がってもまた上がる、熱以外の症状が加わったときは、受診を考える材料になる。

受診するときに医師に伝えるべきこと

  • いつから、最初にどんな症状(のどの痛み・鼻水・咳など)があったか。毎日続いているか、下がってはまた上がるのか。何時ごろに上がるか。体温の記録があれば持参する。
  • 関係なさそうでも熱以外に気づいた症状は全部(関節の痛みや腫れ、首のしこり、息苦しさ、目の症状、発疹、体重の変化など)。
  • 飲んでいる薬(いつから飲んでいるか)、最近の旅行や滞在した地域、ペットや動物との接触、周りに同じ症状の人がいるか。

受診先の目安

まずは内科で相談できます。

※急ぎではない受診を考えるときの目安です。救急を要する場合は含みません。

この記事だけで自己判断をしないでください。長引く熱の原因はさまざまで、実際の判断には診察と検査が必要です。

詳しい解説

ここからは、上のまとめの根拠となるデータを順を追って説明します。

目次

「不明熱」という言葉

この章では、医師が「不明熱」と呼ぶ状態が何を指すのかを説明します。

不明熱という言葉が医学の中で初めて定義されたのは1961年です。原因のわからない熱は、60年以上前から医学の課題とされてきました。

米国の感染症の専門誌に2026年に掲載された、欧米の専門家による総説では、不明熱を次のように定義しています。

  • 38.3℃を超える熱が何度か出る。
  • その熱が3週間を超えて続く。
  • 最低限の検査を済ませても、診断がつかない。

ここで大切なのは、不明熱が「熱が長引いている状態」そのものではなく、医療機関で調べてもなお原因がわからない状態を指す言葉だということです。定義の中に、すでに「検査を済ませても」という条件が入っています。

「3週間」は、受診を待つ期間ではありません。医師が、調べても原因がわからない熱を不明熱として扱い、より詳しく調べていくときの目安です。

なお、日本の研究では「わきの下で38.0℃以上」など、少し違う定義が使われています。何度から熱とみなすか、何週間を長いとみなすかは、研究によって違います。

そもそも「平熱は37℃」という考え方は、歴史的な慣習から来たものです。2020年の総説は、発熱は体の防御のしくみが関わる複雑な反応であり、単にある数字を超えた体温として捉えるべきではないとしています。体温計の数字の小さな違いにこだわりすぎず、熱がどのように続いているか、どんな変化があるかに目を向けることが大切です。

最初に行われる検査

先の総説は、不明熱と判断する前に済ませておくべき最低限の検査として、次のようなものを挙げています。

  • 血液検査(血球の数、炎症の反応、肝臓や腎臓の数値、膠原病などの手がかりになる抗体など)
  • 血液培養(血液の中に細菌がいないかを調べる検査)
  • 尿検査
  • HIV や結核などの感染症の検査
  • お腹の超音波検査と胸部のX線検査、または胸からお腹・骨盤までの CT 検査

長引く熱で受診すると、こうした検査のいくつかから始まることが多いと考えられます。ただし、どの検査をどの順番で行うかは、症状や経過、医療機関によって異なります。

長引く熱の原因の内訳

この章では、長引く熱の原因として、どのような病気がどのくらいあるのかを紹介します。

日本の研究でみる内訳

日本の16の病院が参加し、2016〜2017年に不明熱の成人141人を調べた研究があります。原因の内訳は次のとおりでした。

日本の不明熱の成人141人の原因の内訳を示す横棒グラフ。炎症性の病気(膠原病・血管炎など)48人34.0%、感染症24人17.0%、腫瘍22人15.6%、その他17人12.1%、6か月後も原因不明30人21.3%。総合診療科のある16病院に集まった成人のデータ。
出典: Naito T, et al. BMJ Open. 2019 Nov;9(11):e032059. PMID: 31748308. のデータをもとに作成

最も多かったのは、非感染性炎症性疾患(膠原病や血管炎など、感染以外の原因で体に炎症が起きる病気)で、34.0%でした。以下、この記事では「炎症性の病気」と呼びます。膠原病は、免疫のしくみが誤って自分の体を攻撃してしまう病気の総称です。

次いで感染症が17.0%、腫瘍が15.6%でした。「長引く熱=感染症」と思われがちですが、原因は感染症に限らず、多岐にわたることが分かります。

原因の内訳は年齢によっても変わり、65歳以上では炎症性の病気が43.1%を占めていました(65歳未満では26.3%)。

ただし、この研究は総合診療科のある病院に集まった患者のデータです。街のクリニックを受診する人全体とは、集まる患者が違います。規模も141人と大きくはありません。

国や時代による違い

世界の18の研究(3,164人)をまとめた解析では、最も多い原因は感染症で、37.8%でした。炎症性の病気は20.9%、腫瘍は11.6%です。

同じ解析では、国や地域によって内訳が変わることも示されています。アジアでは感染症が多く、欧州では原因不明が多い傾向でした。研究ごとに定義や対象も異なります。ここで紹介した割合は、「このくらいの幅でいろいろな原因がある」という目安として受け止めてください。

原因がわからないときの経過

日本の研究では、6か月追跡しても21.3%、およそ5人に1人は原因がわかりませんでした。世界のまとめでも23.2%です。

「原因がわからない」と聞くと、不安が大きくなるかもしれません。しかし、先の総説は、詳しく調べても診断がつかない人は、概して経過が良いとしています。

原因がわからないことは、何もしなくてよいという意味ではありません。医療機関で経過を追いながら、新しい手がかりが出てこないかを見ていくことに意味がある、と考えられます。

熱型と体温の記録

この章では、熱の出方がなぜ診察の材料になるのか、そして体温をどう記録すればよいのかを説明します。

熱型の意味と限界

熱が1日のうちにどう上がり下がりするか、毎日続くのか、間をあけて繰り返すのか。医学では、こうした熱の出方を「熱型」と呼び、いくつかの型に名前が付いています。

熱型は、昔から診断の手がかりとして重視されてきました。ただ、先の総説は、典型的な熱型は実際にはめったにみられず、熱型だけで病気を特定することはできないとしています。さらに解熱薬を使うと、熱型が読み取りにくくなることも指摘されています。

それでも、熱の出方に意味がないわけではありません。同じ総説では、熱が毎日続く人と、熱のない期間をはさんで繰り返す人とで、診断のつきやすさが違ったという研究も紹介されています。熱の出方は、医師がどの方向から原因を探すかを考える材料の1つになります。

診察室で「いつから熱がありますか」「どんなふうに上がりますか」と聞かれても、記憶だけで正確に答えるのは難しいものです。熱が何週間にもわたると、なおさらです。熱の出方を正しく伝えるためにも、次に紹介する記録が役に立ちます。

体温の記録のつけ方の例

体温は1日の中で変動し、朝6〜8時ごろに最も低く、夕方4〜6時ごろに最も高くなります。先の総説は、ほかに手がかりの乏しい患者には、医師が毎日の体温の記録をつけるよう伝えるべきだとしています。記録する内容として挙げられているのは、体温、測った部位、使った体温計です。

これをもとに、次のことをメモしておくと、診察の材料になります。

  • 測った時刻と体温(朝と夕方の差が分かるよう、1日に複数回)
  • 測った部位(わきの下、口の中など)
  • 解熱薬を飲んだ場合は、その時刻
  • その日に気づいた、熱以外の症状

解熱薬を我慢する必要はありません。飲んだ時刻を書いておけば、熱の出方を読み取る助けになります。

体温記録の記入例の表。列は日付、時刻、体温、測った部位、解熱薬を飲んだ時刻、熱以外に気づいたこと。10月1日7時37.2℃、17時38.4℃で18時に解熱薬を服用、寒気とだるさ。10月2日7時37.0℃で右の手首が少し痛い、17時38.2℃で手首の痛みが続く。数値は記入例で、実際の患者のデータではない。体温は朝に低く、夕方に高くなるのが一般的。
出典: Wright WF, et al. Clin Infect Dis. 2026 Jul;82(6):909-26. PMID: 42414860. をもとに作成

熱以外の症状という手がかり

この章では、熱とは関係なさそうな症状がなぜ大切なのかを説明します。

広島大学病院で不明熱の42人を調べた研究では、診断の手がかりとして特に重要だったのは、次のような所見でした。

  • 関節の炎症(関節の痛みや腫れ)
  • 首のリンパ節の腫れ(首のしこり)
  • 息苦しさ
  • 目の症状(充血、かすみ、まぶしさ、見えにくさ、目の痛みなど)

熱で受診したとき、関節や目のことまで話そうとは思わないかもしれません。しかし、こうした一見関係のなさそうな症状が、原因を探す手がかりになることがあります。

同じ研究では、診断の決め手になった所見は、話を聞くことだけでなく、診察で見つかることも少なくありませんでした。つまり、症状を伝えれば診断がつく、というわけではありません。伝えた症状が、医師がどこを重点的に診察し、何を検査するかを決める材料になる、ということです。ただし、この研究は1つの病院の42人を対象にした小規模なもので、結果をそのまま一般化はできません。

また、先の総説は、医師が確認すべき情報として、住んでいる地域や滞在した地域、ペットや動物との接触、変わった食べ物を口にしたか、仕事の環境、周りに同じ症状の人がいるかを挙げています。いずれも、熱の原因になりうるものとの接点を探るための質問と考えられます。さらに、飲んでいる薬はすべて、いつから飲んでいるかも含めて確認が必要だとしています。自分では熱と結びつけていなかった出来事でも、医師にとっては大事な情報になることがあります。

ここに挙げた症状があるからといって、重い病気があるとは限りません。これらは原因を探す方向を示す手がかりで、特定の病名を示すものではありません。反対に、熱以外の症状がないから様子をみてよい、ということでもありません。不明熱の定義そのものが、医療機関での検査を前提にしています。熱だけが長引いていることも、それ自体が相談の理由になります。

なお、熱よりも咳や疲れが中心の場合は、長引く咳 ―期間でみる代表的原因、疲れ ―原因の内訳と受診前の整理もあわせてご覧ください。

記録や情報がすべてそろっていなくても、受診してかまいません。覚えている範囲で伝えれば十分です。

出典

出典の選び方については編集方針をご覧ください。

  • Wright WF, et al. Clin Infect Dis. 2026 Jul;82(6):909-26. PMID: 42414860.
  • Naito T, et al. BMJ Open. 2019 Nov;9(11):e032059. PMID: 31748308.
  • Fusco FM, et al. BMC Infect Dis. 2019 Jul;19(1):653. PMID: 31331269.
  • Takeda R, et al. J Gen Fam Med. 2017 Jun;18(3):131-4. PMID: 29264008.
  • Wright WF, et al. Open Forum Infect Dis. 2020 May;7(5):ofaa132. PMID: 32462043.

本記事の内容は一般的な医学情報であり、個別の診断や治療の助言ではありません。免責事項もあわせてご確認ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次