しっかり寝たはずなのに、朝から体が重い。休日に休んでも、週の半ばにはもう疲れ切っている。そんな状態が何週間も続いていないでしょうか。
疲れは誰にでもある感覚だからこそ、「このくらいで病院に行ってよいのか」「行っても何を話せばよいのか」が分かりにくい症状です。この記事では、疲れの原因として実際に何が多いのかというデータと、受診するときに医師に伝えておきたいことをまとめます。
この記事の要点
- 疲れは、一般診療の受診理由の1〜2割を占めるありふれた症状(欧州のデータ)。
- 原因で最も多いのはうつ(約2割)、治療が必要な体の病気は4.3%(約25人に1人)。
- 疲れ以外に異常がなければ、検査を広げても新たな病気は見つかりにくい。
- 原因のはっきりしない疲れの対処は、薬ではなく心理教育や活動の調整。
- 【受診の目安】疲れで生活に差し支えるときや、いびき・睡眠中の呼吸停止・気分の落ち込み・体を動かした後に長引く悪化があるときは、相談を考える材料になる。
受診するときに医師に伝えるべきこと
- いつから疲れているか、急に始まったか徐々にか、風邪などのきっかけがあったか。休むと回復するか、体を動かした後に悪化するか。
- 疲れの中身(だるさ・眠気・力が入らない)と、疲れ以外の変化や随伴症状(睡眠異常やいびき、気分、体重の変化など)。
- 服用中の薬・サプリメントと、お酒の量。直近の健康診断の結果(持参する)。
受診先の目安
まずは内科で相談できます。
※急ぎではない受診を考えるときの目安です。救急を要する場合は含みません。
この記事だけで自己判断をしないでください。疲れの原因はさまざまで、実際の判断には問診や診察が必要です。
詳しい解説
ここからは、上のまとめの根拠となるデータを順を追って説明します。
ありふれた症状としての疲れ
この章では、疲れがどのくらいよくある症状なのか、そして医学的には「疲れ」をどう分けて考えるのかを説明します。
ドイツの一般医学会(DEGAM)の診療ガイドラインをもとにした総説によると、疲れは、かかりつけ医を受診する主な理由、またはほかの用件と並ぶ理由として、受診全体の10〜20%を占めています。一般の人を対象にした調査でも、欧州各国で22〜38%の人が疲れを感じていると報告されています。
この記事で紹介する数値は、いずれも欧州(主にドイツ)のデータで、日本の数値ではありません。それでも、疲れが医療機関で相談される理由としてごく一般的なものだということは読み取れます。
ひとくちに「疲れ」といっても、中身はいくつかに分かれます。同じ総説は、疲れを次の2つと区別するよう求めています。
- 力が入らない(筋力低下): 筋肉や神経の病気で、実際に力が出にくくなっている状態
- 日中の眠気: 普段の活動中に眠り込んでしまうほどの眠さ
「だるくて気力が出ない」のか、「とにかく眠い」のか、「腕や脚に力が入らない」のかで、医師が考える病気の範囲は変わります。自分の疲れがどれに近いかは、受診のときに伝えておきたいことの1つです。
続いている期間も手がかりになります。医学的には、6か月を超えて続く疲れを「慢性疲労」と呼びます。
疲れの原因の内訳
この章では、疲れで受診した人に、最終的にどんな原因が見つかっているのかを紹介します。
一般診療で疲れを訴えた患者を調べた26の研究をまとめた解析(システマティックレビュー・メタ解析)があります。組み入れられた研究の規模は22人から1万人超までさまざまで、地域別では欧州の研究が最も多くなっています(26本中12本)。
最も多い、うつ
この解析で最も多かった原因は、うつで、18.5%でした。疲れで受診した人のおよそ5人に1人にあたります。
これは「疲れは気のせい」「心の問題だ」という意味ではありません。うつは治療できる状態です。DEGAM のガイドラインは、うつや不安障害を、疲れの診療で見逃してはいけないものの筆頭に挙げています。あわせて、体・心・生活環境のそれぞれの要因を併せて見ていくことを勧めています。
治療が必要な体の病気の割合
この解析では、貧血やがんのほか、疲れの原因になりうる病気のうち治療法があるものを、ひとまとめにして数えています。こうした治療が必要な体の病気が見つかったのは、4.3%でした。およそ25人に1人です。そのなかでは、糖尿病・貧血・甲状腺機能低下症(甲状腺のホルモンが足りなくなる病気)が多くみられました。
| 診断 | 割合(95%信頼区間) |
|---|---|
| うつ | 18.5%(16.2〜21.0%) |
| 治療が必要な体の病気(貧血・がんを含む) | 4.3%(2.7〜6.7%) |
| — うち貧血 | 2.8%(1.6〜4.8%) |
| — うちがん | 0.6%(0.3〜1.3%) |
がんが原因だったのは0.6%で、疲れで受診した人の中ではまれでした。ただし、この解析は研究ごとの対象や診断基準のばらつきが大きく、日本のデータも含まれていません。数値は目安として受け止めてください。
睡眠と薬
睡眠の問題も、疲れの背景として多くみられます。先の総説では、一般診療の患者の26.5%が不眠症の基準にあてはまっていました。睡眠不足が体に与える影響は、睡眠不足―体に起きる変化と病気リスクで詳しく説明しています。
飲んでいる薬が疲れの原因になることもあります。同じ総説は、原因になりうるものとして、抗うつ薬、抗ヒスタミン薬、ベンゾジアゼピン系の薬(睡眠薬や抗不安薬の一部)、抗精神病薬、血圧を下げる薬、医療用麻薬(オピオイド)、パーキンソン病の薬、抗がん剤などを挙げています。お酒の飲みすぎも原因になります。
ただし、これらの薬を飲んでいる人が必ず疲れるわけではありません。また、疲れの原因かどうかは自分では判断できません。自己判断で薬をやめず、服用中の薬として医師に伝えてください。
検査の考え方
「念のため、全部調べてほしい」と思う人もいるかもしれません。ただ、先の26研究の解析は、疲れのほかに問診や診察で異常がない場合、検査の範囲を広げても新たな病気の発見にはほとんどつながらないとしています。むしろ、本当は病気がないのに異常値が出る「偽陽性」が増え、そのための追加の検査が必要になることがあります。
DEGAM のガイドラインも、治療が必要な体の病気が見逃されている場合は、ほぼ必ず問診か診察に何らかの異常があるとしています。
つまり、検査の方向を決めるのは、問診で何が分かるかです。疲れ以外にどんな変化があるかを伝えることが、必要な検査につながります。
健康診断の結果を持っていくのも役に立ちます。受診時の血液検査と重なる項目があり、以前の数値と比べられるからです。
薬の役割と、原因が見つからないとき
この章では、疲れに対してどのような治療が行われるのか、そして原因がはっきりしないときにどう考えればよいのかを説明します。
疲れそのものに効く薬
原因となる病気が見つかった場合は、その病気の治療を行います。貧血なら貧血の、甲状腺機能低下症なら甲状腺の治療です。
一方、原因のはっきりしない疲れに対して、DEGAM のガイドラインが中心に置いているのは、薬ではありません。病気や症状についての説明を受けて理解を深めること(心理教育)、行動療法、そして体調に合わせて調整した活動です。行動療法や症状に合わせた活動は、原因の病気がある場合にも、原因がはっきりしない場合にも、疲れの改善が期待できるとされています。
異常なしと言われたあと
検査で異常が見つからないと、「原因が分からなかった」と感じるかもしれません。ただ、前の章で見たとおり、治療が必要な体の病気は、ほぼ必ず問診か診察に何らかの異常を伴います。そう考えると、「異常なし」は、治療が必要な体の病気が隠れている可能性が低いことを確かめられた結果、と受け止めることもできます(これは研究結果から導いた解釈で、直接確かめられたことではありません)。
DEGAM のガイドラインは、原因が見つからないときは、数週間後に再診して経過をみることを勧めています。疲れの強さや睡眠、その日の活動を記録しておく「症状日誌」も、経過を伝える材料になります。
体や心に負荷がかかった後に、症状の悪化が少なくとも24時間続く状態を「労作後の症状悪化(PEM)」といいます。これは筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)の特徴の1つとされています。慢性疲労症候群は、6か月以上続く疲れに、労作後の悪化・睡眠の障害・筋肉や関節の痛みなどの症状を複数伴うものです。
体を動かした後に長く悪化が続く場合は、その旨を医師に伝え、活動量の調整について相談してください。
こうした症状があるときは、早めの受診がすすめられる
以下は、医師向けの診療ガイドラインが「見逃してはいけない」としている状態の手がかりです。
下記に該当する場合、早めの受診がすすめられます。
- いびきや、眠っている間に呼吸が止まっていることを指摘された。運転中に居眠りをしそうになった。
- 気分の落ち込みや、何をしても楽しめない状態が続いている。
- 体や心に負荷がかかった後、24時間以上たっても悪化が続く。
- 疲れのほかに、体重の変化など気になる体の症状がある。
1つ目は睡眠時無呼吸症候群(眠っている間に呼吸が止まり、眠りが浅くなる病気)の手がかりです。2つ目はうつ、3つ目は ME/CFS の手がかりです。4つ目は、治療が必要な体の病気がほぼ必ず疲れ以外の異常を伴うことにもとづいています。
これらにあてはまるからといって、治療が必要な病気があるとは限りません。疲れで受診した人のうち、治療が必要な体の病気が見つかったのは4.3%でした。また、うつや睡眠時無呼吸症候群は、見つかれば治療ができる状態です。
反対に、あてはまるものがないから大丈夫、ということでもありません。疲れだけが続く場合も、説明がつかなければ再診しながら経過をみることが勧められています。途中で新しい症状が加わったら、そのことを伝えてください。
なお、急な胸の痛みや息苦しさを伴う場合は、疲れとは別に考える必要があります。胸が痛い、苦しいとき — 何が起きているのか、どんなときに急を要するのかをご覧ください。
出典
出典の選び方については編集方針をご覧ください。
- Stadje R, et al. BMC Fam Pract. 2016 Oct;17(1):147. PMID: 27765009.
- Maisel P, et al. Dtsch Arztebl Int. 2021 Aug;118(33-34):566-76. PMID: 34196270.
- Kornder N, et al. ZFA (Stuttgart). 2023;99(3):127-32. PMID: 37193573.
本記事の内容は一般的な医学情報であり、個別の診断や治療の助言ではありません。免責事項もあわせてご確認ください。

