周りで新型コロナが流行っていて、自分も同じような症状が出た。きっとコロナだろうと思って受診したのに、検査の結果は陰性だった。「検査が間違っていたのでは」と感じた経験のある方は少なくないと思います。
この記事では、外来で受けることの多い抗原検査の特徴と、陰性の結果が出る理由を、公表されているデータをもとに整理します。
この記事の要点
- 外来の検査の多くは抗原検査。陽性の信頼度は高いが、陰性は感染の否定にはならない。
- 発症1週間以内でも、コロナの抗原検査は感染者の約5人に1人が陰性と出る。
- インフルエンザでも、発症から時間が短いほど見逃しが多いという国内の報告がある。
- 【受診の目安】65歳以上、持病のある人、妊娠中の人、子どもは、症状があれば受診がすすめられている。
受診するときに医師に伝えるべきこと
- 発熱、咳、痰、のどの痛みなどの症状の有無と、いつからどう変わってきたか。
- 医療機関や自分で検査した日時と、その回数・結果。
- 持病や妊娠の有無。
- 周りで診断された人に最後に会った日。
受診先の目安
まずは内科で相談できます。お子さんの場合は小児科も選択肢になります。
※急ぎではない受診を考えるときの目安です。救急を要する場合は含みません。
この記事だけで自己判断をしないでください。検査結果をどう受け止め、再検査や再受診をするかは、あなたの状況を知っている医師と一緒に決めるものです。
詳しい解説
ここからは、上のまとめの根拠となるデータを順を追って説明します。
※記事中の感度・特異度の数字の読み方は、感度と特異度の解説ページで説明しています。
抗原検査と遺伝子検査の違い
この章では、外来で行われる検査が何を調べているのかを説明します。
新型コロナやインフルエンザの検査は、大きく2種類に分けられます。抗原検査は、ウイルスが持つ特定のたんぱく質を見つける検査です。遺伝子検査は、ウイルスの遺伝子(RNA)を増やして見つける検査で、PCR検査がその代表です。
一般の外来で多く行われているのは抗原検査です。遺伝子検査のほうが見つける力(感度)は高く、国内の多施設研究では、インフルエンザの感度が抗原検査の79.7%に対して、迅速に結果が出る遺伝子検査で99.5%でした。どちらの検査を使うかは、症状や持病、医療機関の体制などから医師が判断します。
| 抗原検査 | 遺伝子検査(PCR検査など) | |
|---|---|---|
| 見つけるもの | ウイルスのたんぱく質 | ウイルスの遺伝子 |
| 見つける力(感度) | 遺伝子検査より低い | 高い |
| 陽性と出たとき | 感染している可能性が高い | 感染している可能性が高い |
| 陰性と出たとき | 感染していないとは言い切れない | 抗原検査より見逃しが少ない |
抗原検査の結果は、陽性と陰性で重みが違います。新型コロナの抗原検査を調べた研究をまとめたコクラン・レビュー(複数の研究を統合して評価する、信頼性の高い分析)では、症状のある人での特異度(感染していない人を正しく陰性と判定する割合)は99.1%でした。陽性と出れば、感染している可能性は高いといえます。一方、成人を対象とした別のメタ解析では、陰性の結果は遺伝子検査で確認する必要がある場合があると結論づけています。
陰性の結果が出る理由
この章では、感染しているのに抗原検査が陰性になる理由を3つ説明します。
発症からの時間
抗原検査は、検体の中のウイルスの量が少ないと見つけにくくなります。コクラン・レビューでは、ウイルスの量が少なくなるほど感度が下がっていました。症状のある人の感度は、発症から1週目では80.9%、2週目では53.8%でした。同じレビューの試算では、症状のある人が発症から1週間以内に検査を受けると、感染している人のおよそ5人に1人は陰性と判定されます。
インフルエンザでは、発症からの時間が短すぎる場合の見逃しが報告されています。東京の診療所で82人を調べた研究では、抗原検査で陰性と出たのに実際は感染していた人は、正しく陽性と出た人より、発症から検査までの時間が短いことがわかりました。国内の多施設研究でも、発症から12時間未満では、抗原検査の感度が遺伝子検査より低い(統計的に意味のある差)という結果でした。ただし、前者は1施設・82人の小さな研究で、後者は調べた人のほとんどがA型でした。
1回の検査の限界
1回の陰性で終わらせず、時間をおいてもう一度検査すると、見つかる人が増えます。米国で、自宅で48時間ごとに抗原検査を行った研究では、症状のある人が48時間あけて2回検査すると、感染していた人の93.4%を見つけられました。ただし、この研究は自宅での自己検査の結果を自己申告したもので、48時間より短い間隔は調べていません。
変異株の影響
「ウイルスの型が変わって、検査が効かなくなったのでは」と考える方もいるかもしれません。同じ米国の研究で、デルタ株とオミクロン株を比べたところ、抗原検査の感度に統計的な差はみられませんでした。ただし、その後に広がった株での比較は、この研究では行われていません。また、先に紹介したコクラン・レビューは、オミクロン株が広がる前の研究をまとめたものです。
別のウイルスという可能性
この章では、「本当にコロナではなかった」場合について説明します。
風邪のような症状を起こすウイルスは、新型コロナ以外にもたくさんあります。京都市の5つの医療機関で、2023年12月から2024年3月にかけて、呼吸器の感染症が疑われた人の検体2,949件を遺伝子検査で調べた研究があります。新型コロナが見つかったのは20.3%、インフルエンザは5.6%、RSウイルスは1.4%で、3つを合わせても3割に届きませんでした。これら以外では、ライノウイルスやエンテロウイルス、季節性のコロナウイルス(新型コロナとは別のコロナウイルス)などが見つかっています。
新型コロナが流行っている時期でも、同じような症状の原因がすべて新型コロナとは限りません。ただし、これは京都の1シーズンの結果で、流行の状況は地域や時期で変わります。
陰性だったときの受け止め方
この章では、ここまでの内容を、検査結果の受け止め方としてまとめます。
抗原検査の陰性は、「その時点で、その検査では見つからなかった」という意味です。発症から時間が短かった、ウイルスの量が少なかった、あるいは本当に別の原因だった、のいずれもありえます。
厚生労働省は、抗原検査キットで陰性だった場合も、必要な場面でのマスク着用やこまめな手洗いなど、基本的な感染予防を続けるよう呼びかけています。症状が続く、あるいは悪くなっていくときは、陰性の結果を理由に様子を見続けるのではなく、再受診や再検査を考える材料にしてください。
こうした症状があるときは、早めの受診がすすめられる
厚生労働省は、次のような方は、症状があれば医療機関を受診するよう示しています。自分で検査して陰性だった場合でも、受診を考える材料にしてください。
下記に該当する場合、早めの受診がすすめられます。
- 65歳以上の方。
- 糖尿病や心不全、呼吸器の病気などの持病がある方。
- 妊娠している方。
- お子さん。
なお、急な息切れや意識がもうろうとしているときなど、救急車を呼ぶ目安は総務省消防庁が示しています。
出典
出典の選び方については編集方針をご覧ください。
- Dinnes J, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2022 Jul;7(7):CD013705. PMID: 35866452.
- Hirabayashi E, et al. JBI Evid Synth. 2024 Oct;22(10):1939-2002. PMID: 39188132.
- Soni A, et al. Ann Intern Med. 2023 Jul;176(7):975-82. PMID: 37399548.
- Soni A, et al. Ann Intern Med. 2022 Dec;175(12):1685-92. PMID: 36215709.
- Tanei M, et al. BMJ Open. 2014 Jan;4(1):e003885. PMID: 24384898.
- Mikamo H, et al. PLoS One. 2022;17(10):e0276099. PMID: 36301841.
- Matsumura Y, et al. Sci Rep. 2025 Jan;15(1):924. PMID: 39762485.
- 厚生労働省. 新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け). 2023.
- 総務省消防庁. 救急車を上手に使いましょう ~救急車 必要なのはどんなとき?~.
本記事の内容は一般的な医学情報であり、個別の検査結果の解釈や診断の助言ではありません。免責事項もあわせてご確認ください。

